ゆらぐ蜉蝣文字
□第8章 風景とオルゴール
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8.8.16
. 春と修羅・初版本
40火薬も燐も大きな紙幣もほしくない
「火薬」=権力、「紙幣」=財力と解して、‘カネも地位も要らない’という意味にとるのが一般的な理解です。
しかし、なぜ「燐」なのでしょう?
燐(リン)は非金属元素ですが、単体(同素体)のひとつ白燐(黄燐)は、空気中で自然発火する毒性のロウ状固体。赤燐も発火しやすく「燐寸(マッチ)」の原料になります。
【76】「雲とはんのき」の:
「赤紙をはられた火薬車だ」
また、【79】「風の偏倚」の:
「おヽ私のうしろの松倉山には
用意された一萬の硅化流紋凝灰岩の彈塊があり」
との関連を考えれば、「火薬」と「燐」は、ファナティックな《熱した》精神につながるイメージです。
「大きな紙幣」のほうは、‥財力ならば、紙幣の大きさよりも札束の厚さだと思うのですが‥、おそらく、紙幣が大きいのはお伽話的イメージでしょう。
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