ゆらぐ蜉蝣文字
□第5章 東岩手火山
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5.5.17
. 春と修羅・初版本
15ひとの名前をなんべんも
16風のなかで操り返してさしつかえないか
17 (もうみんな鍬や縄をもち
18 崖をおりてきていヽころだ)
ここで問題になるのは、17-18行の独白です。
たしかに、これは、農学校の生徒たちが、そろそろ追いついて来るという意味かもしれません。一応、そう読んでおきました。
しかし、持ち物の「鍬(くわ)」は、いいとして、「縄をもち」は、ちょっと解せない感じがします。
10月ですから、実習は稲刈りか、あるいは冬麦の播種‥いずれにしろ「縄」は変です。
「鍬や縄をもち」は、むしろ‘農民一揆’の扮装ではないでしょうか。
花巻城は、江戸時代には郡代官の居城でした。
オペラ『ポルティチの唖娘』で、圧政に反抗する漁民たちは、手に手に武器を持って総督の館を襲いました。
また、反乱の首領として人々の上に立ったマサニエッロが、逆に、激昂した民衆の生け贄となって殺されてしまうというストーリーも思い起こされます。
ともかく、17-18行目の独白には、なにか不穏な気配を感じないわけにいきません。
現実的な意識の把え方としては、もう誰かやって来るから、「ひとの名前を[繰]り返」しているわけにはいかないということです。
以上で、ギトンがこの作品について、現在考えていることは、述べ終りました。
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