ゆらぐ蜉蝣文字


第5章 東岩手火山
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5.2.2


ところで、位相のずれた波を重ね合わせると、“干渉”がおきます。位相差に‘ゆらぎ’があれば、干渉縞──縞模様ができます:画像ファイル:光の干渉縞

位相差の‘ゆらぎ’しだいで、縞模様は同心円状になったり、さまざまな形を描きます:画像ファイル:ニュートン・リング

作者は、しだいに光度を落としてきた夕方の日差しの中で、カラマツの梢、あるいは枝先に、干渉縞のような虹色の模様を見たのではないでしょうか☆

☆(注) 木の枝などに虹が見えることは、よくありますが、ニュートン・リングのような縞模様が見えたとすれば、おそらく幻視です。

カラマツの枝々は、誤差の‘ゆらぎ’による干渉縞を派生しながら、光波を測定している……測定に誤差があるために、あんなに「しん」が徒長した(伸びすぎた)枝や、伸びたりない枝があるのだ──作者は、このように考えたのではないでしょうか?‥




. 春と修羅・初版本
03柏の木の烏瓜ランタン
04(ひるの鳥は曠野に啼き
05 あざみは青い棘に遷(うつ)る)

カラスウリは、ウリ科のつる草で、林や藪の草木にからみついて生長します。花が夜間に咲いて蛾が授粉を媒介する珍しい植物で、キツネノマクラとも云います。
秋に、朱色の果実をつけます::画像ファイル:カラスウリ

「ランタン」は、携帯用の石油ランプ。今でもキャンプなどで使われます:画像ファイル:ランタン ちょうちんではありませんwww
カシワの木に、カラスウリがからみついて、「ランタン」のように赤い実が下がっているのでしょう。

アザミは、非常に種類が多くて、ギトンはアザミが出てくるとお手上げです。
ファイルには、岩手に多そうな種をいくつか挙げておきました:画像ファイル:アザミ

ナンブアザミは、東北の山地の草原や林縁には普通に見られます。花期は8〜10月。高さ2メートルにもなります。花の付け根に棘がたくさんあります。

ノハラアザミも、山地の草原や林縁に見られます。花期は8〜10月。高さは1m程度。棘のある葉が、花のすぐ傍まであります。花が上向きに咲くのが特徴です。

タカアザミは、平地の草原や田んぼの脇に生えます。花期は8〜10月。高さ3メートルにもなります。ナンブアザミと同じく、花の付け根に棘がたくさんあります。花が下向きに咲くのが特徴。

つまり、どれも、かなり高く生長し、花の付け根にまで鋭い棘がびっしりと生えています。
これらの特徴から考えると、「青い棘に遷る」とは、だんだん花がなくなって、棘ばかりになって行く、という意味でしょう。

なお、アザミは林内には生えませんから、4-5行目の括弧書きは、林の外の野原のようすを書いていることになります。

梢や枝の先が鋭く「徒長し」たカラマツや、昼間の野原のまぶしさ、そして、「ひるの鳥」の声やアザミの「青い棘」の視覚から、作者は、ちくちく刺す痛みを感じている──この神経感覚に注目する必要があります。

まえにも、こんな詩があったような。。。

そうです!

第1章の「陽ざしとかれくさ」に現れていた「チーゼルが刺し」、あるいは「雲の棘」です:【13】陽ざしとかれくさ
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