ゆらぐ蜉蝣文字


第8章 風景とオルゴール
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8.13.3


そこで、2n分の不足を、「風林」より後のどこかで調整しなければならなくなったわけですが、おそらく、この段階ではもう、各詩篇のテキストについて、推敲できるところはすべて推敲し尽くしていたので、これ以上テキストを変更したくなかったのだと思います。作者は、いちばん後に加えた巻末の2篇──「イーハトブの氷霧」と「冬と銀河ステーシヨン」──で、2n分を削って調整することにしました☆

☆(注) もっとも、作者は最初、「風景とオルゴール」で1n分を削り、巻末2篇で1n分を削ることを考えていたようです。というのは、「風の偏倚」から「鎔岩流」までの全作品について、目次の表示と本文の頁数が1nずつずれているからです(《第4段階》@目次原稿の成立は、同A巻末2篇縮小の直前)。入沢氏が「なぜこの1ずつのズレが生じているのか、理由づけにはなはだ苦しむところであり、いまだに名案を得ない。多くの方々の御検討、御考察に期待したい問題である。」(op.cit.,p.401)と書いておられる問題は、このように考えれば解決するかもしれません。

大きく削られたのは、「イーハトブの氷霧」のほうだったと思われます。というのは、現状の【印刷用原稿】は、

          イーハトヴの氷霧

 けさはじつにはじめての凛々しい氷霧だつたから
 (広重たちのふきぼかしは
 みんなはまるめろやなにかまで出して歡迎した
 恐ろしく偶然でなつかしい)

のようになっているからです★

★(注) より正確に言うと、線による抹消と傍書ではなく、元テキストの上に、墨で重ねて訂正後テキストを書き込んでいます。

消されている元のテキストは、
「前後に括弧がついている点から言っても、内容から言っても、これだけで完結するものとは考えられず、この二行をプレリュードとする本文が更につづいていたと見る方がはるかに自然だからである。」(op.cit.,p.110)

また、元のテキストでは、この括弧つき2行よりあとの“本文”の中に、「けさはじつにはじめての凛々しい氷霧だつたから/みんなはまるめろやなにかまで出して歡迎した」に相当する内容のパッセージ(おそらく相当長い部分で、上の2行は、その要約)があったはずです。

. 8.1.8 【印刷用原稿】の編成替え
さて、このような《第4段階》Aの調整の結果、「イーハトブの氷霧」は、わずか2行──標題をいれても半n分となり、「冬と銀河ステーシヨン」は、ちょうど3頁にピッタリおさまるように整形されました。そのあと、《初版本》には1頁分の空白ページがありますが、これは、巻末をきれいに見せるため。調整前から予定されていたことでしょう。合計4n半。

こうして、《第3段階》で6n分増やし、《第4段階》で2n分を減らし、差引き、巻末は4頁(厳密に言えば4頁半)の増加となったわけです。

これで、ようやく内容の検討に入れます(^.^;)ゞ



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