ゆらぐ蜉蝣文字
□第8章 風景とオルゴール
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8.6.7
. 春と修羅・初版本
12 (ああもろもろのコは善逝(スガタ)から來て
13 そしてスガタにいたるのです)
「善逝(スガタ)」は、釈迦(シッダルタ)の尊称の一つで、その意味は‥と調べてみると、じつにいろいろな説明があるのですが(汗;)、分類すると、↓次のようになるでしょう:
@ サンスクリット語 sugata の訳語が「善逝(ぜんせい)」。つまり、善く行(い)った者。
A 目的をよく達成した人。成就した人。
B 幸福に至った者。幸ある人。
C「迷いの世界を脱し,真理の境界に至った者。」「煩悩を断って悟りの彼岸に去った者。」「智慧の力で煩悩を断ち、悟りの境地に達した仏の意である。」など。
どうやら、@の「善く行った」というのが、もともとの意味で、そこから、A、Bの意味が派生し、それらを仏教的に説明すれば、C「迷いを脱する」「煩悩を断つ」「智慧」「悟り」‥ということになって、結局、“仏陀”(悟った者)と同じことになるのでしょう。
関連して:
「仏教徒は、サウガタ(Saugata スガタにしたがう人々)とも呼ばれる。」
という説明もありました。
この「もろもろのコはスガタから來て‥スガタにいたる」は、最後の36-37行目に、もう一度出てきますから、とりあえずここでは、“人の持つ徳性は、すべてシャカの教えに基いている”──くらいに理解しておきたいと思います。
. 春と修羅・初版本
14腕を組み暗い貨物電車の壁による少年よ
15この籠で今朝鶏を持つて行つたのに
16それが賣れてこんどは持つて戻らないのか
この「少年」も、「貨物車」の乗客でしょう。からの「籠[かご]」を脇に置いているのを見て、今朝「鶏」を入れて売りに行って来たのだろうと想像します。
谷の奥には、志戸平温泉、大沢温泉、鉛温泉などがありますから、「鶏」の行商をすれば、買ってくれる旅館には事欠きません。おそらく、作者の推定は当たっているでしょう。
しかし、「腕を組み暗い貨物電車の壁による」少年は、憔悴して陰気なようすです。ニワトリが全部売れて喜んでいるようすが見られません。
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