ゆらぐ蜉蝣文字


第4章 グランド電柱
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4.16.3


自然林を歩けば、かならず倒木に出会います。倒木があることは、森が健康に若返っている証拠です。
寿命に達した樹木が倒れ、朽ち果てることによって、そこにギャップ(森の中で木のない場所)ができ、日が差し込んで新しい若木が生長するのです:画像ファイル:ミズナラの倒木

「あんまりロシヤふうだよ」は、森の中で倒木が放置されて朽ち果ててゆく光景が、(人間が手をかけて倒木などは片付け、きれいな野山を保とうとする日本の里山の常識とは違って)どこか日本離れしている‥、ツルゲーネフやチェーホフの小説に出てくるロシアの原始林の光景を思わせる‥‥ということでしょう。

賢治は奥羽山脈には足を踏み入れていないようなのですが‥、“中通り”から少し足を伸ばすだけで、当時は至るところ“ロシヤそのもの”の原生林が広がっていたはず‥。

このスケッチの場所は、花巻近くの丘陵地か山沿いでしょう。当時は、里のすぐ近くにも、人手のほとんど及んでいない・こんな自然林が残されていたのです。


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