ゆらぐ蜉蝣文字
□第0章 いんとろ
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0.4.3
後年の賢治の作品でも、この「異界」に触れているものは、かなりあるのですが、
たとえば、映画化されてもてはやされた「グスコーブドリの伝記」も、
その最初の草稿「ペンネンネンネンネンネン・ネネムの伝記」は、
「化物界」で成長し裁判長になった主人公(化け物)が、慢心のあまり足を踏み外して、人界に転落してしまうという物語でした。
. 宮沢賢治の絵
↑↑こちらは賢治の自筆水彩画です。「ケミカル・ガーデン」という仮題がついていますが、後年の人が付けた題でしょう。
じっさい、描かれているのは化学の花園などではなく、夜空の月と星空、そして地上から伸び上がっている得体の知れない5本の細い腕です。
よく見ると、月と星が表面に描かれた空には裂け目があって、空の向こう側にいる人物(化け物?)の姿が覗いています。
地上の腕も、地面にできた裂け目の下──地下界から伸びて来ているようです。
空の向こう側と地下には、化け物の世界がある──という世界観を説明した絵のように思われるのです。
ついでに、↑↑もう1枚の絵も説明しておきましょう:
左下の黒い山の上に、おおぜいの人物が立って、みな両手を上げていますが、踊っているようにも、手を振って助けを呼んでいるようにも見えます。頭部に兎のような耳が描かれていますが、ともかく動物なのでしょう。
そして、画面の上方半分近くを占めているのは、雲に覆われた暗い空。
その下に、雪をかぶった山々──岩手山に似ているかもしれません。山麓には、暗い大地か海原が波打っています。さらに、手前に白く描かれているのは氷河のようです。
これは、「凶歳」─「測候所」という詩を、絵にしたものではないかと思います: 凶歳 - 測候所 かいせつ
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