* 短編小説 *
□ * おやすみ、愛しい人 *
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激短文・市丸視点
夜中にふと目が覚めた。
今何時やろ…?と反射的に置時計側に顔を向け、空いた隣に意識が戻る。
昨夜同じ布団で眠ったはずの恋人がいない。不思議に思って顔を上げると、その先で上体を起こしうつらうつらと揺れる日番谷がいた。
「風邪引いてまうよ?こっちおいで」
明らかに寝ぼけている少年のわき腹に手を当てるとひやりと冷たい。
いつからこうしていたのか、心配になって抱き寄せれば何の抵抗もなしに腕の中に転がってきた。
「…っと」
目が覚めていればこんな大人しく腕枕なんてさせてくれない。
恥ずかしさを隠す為にしかめっ面で俯いて、白い耳が赤く染まる。そんな居心地悪そうに照れる顔も可愛いけど、たまには安心して体を預けてくれたらいいのに、と思っていた市丸は僅かに頬を綻ばせた。
一つの布団に包まれて、すやすや眠る恋人を腕に抱く。
おそらくこんなに優しい気持ちになることは、そうはないに違いないし。
日番谷の首の下を通る腕を軽く曲げ、柔らかな髪に指を絡めると起きる様子のない恋人に安堵して今度はそっと頭を撫でた。
(くすぐった…)
自分の手の動きに合わせてふわふわの、それでいて夜気に冷された髪が首筋を撫でて、まるで長毛種の猫を抱いているような手触りに思わず頬ずりしたくなる。
しかし万が一にも起こしてまったら忍びないので、かわりに体温を移すよう腕の中で丸くなる愛しい子をそっと包めば、静かな寝息を立てる恋人が「んん、」と小さく身じろいだ。
(しもた…?)
少し調子に乗りすぎたか?と顎を引いて覗き込むと、穏やかな寝顔に戻った愛しい子が市丸の夜着の胸に小さな手を軽く添えて、幸せそうに眠っている。
いつも刻まれた眉間の皺も、筆と刀を握る小さな手も、隊長としての責務を背負う両肩もこの寝顔からは想像できない。
あどけない見た目通りの幼い姿。でもひとたび目を覚ませば一隊を率いるに相応しい強さをみせる。
でも、だからこそ。
自分の前でだけは無防備な姿を見せてくれることが嬉しくて、幸せな気持ちにさせてくれるのだ。
時計を見れば午前3時。
目覚めるにはまだ早く、気高くも優しい腕の中の大切な人が穏やかに休める時間。
(…ええ夢を)
愛しさを込めて滑らかな額に口付ければ、もう少し寝かせろと言わんばかりに一度ぎゅっと眉を寄せて、再び穏やかな寝息を立て始めた。
-オワリ-
実は、この日番谷さんのモデルはうちの坊主くんで、市丸さんは私ですw
夜中目を覚ましたら揺ら揺らしてたうちの三歳児。
すやすや寝息を立てる姿が天使すぎて、日番谷さんだったら…と妄想しちゃいました。
隊長さんなのに…三歳児がモデルでごめんね^^;
最後までお読み頂きありがとうございます!
2014/2/19 ユキ☆
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