ササゲモノ

□風音
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穏やかな風の吹く丘の上に一つの魂が眠っている。二人しか知らないその場所に立っていたその男は振り返るとやわらかに微笑んだ。


「ルルーシュ?」
「スザク。やっぱり来てくれたか。」
「…生きてるの?」
「生きている訳ではない。」
「…っ。」

触れられた手はとても冷たくて。

「お前に会いに来た。」
「え?」

以前なら聞かれることのない言葉にスザクは思わず目を見張る。
赤く染まる頬も仕草も体温が感じられない以外何も変わらない。

「ルルーシュ会いたかった。」
「俺も。」
「ね、このままここにいてよ。」

もう離さんとばかりに力いっぱい抱きしめるスザクの体を押し戻すとアメジスト色の瞳をふせてルルーシュが呟いた。

「それは…出来ないんだ。」

その姿は揺らぎ出している。

「嫌だルルーシュ!!」
「駄目なんだ約束したから。」
「そんなのっ!約束なんっ……。」
「スザク今日が何の日か分かってるよな。」
「うん、君と結ばれて二年の日。」

そう言ってキスを贈る。

「忘れる訳ないでしょ?これからだってこの日にはここに来るよ。」
「俺もスザクに会いにくる。」
「うん。」

さぁっと風が吹くともう愛しい人の姿は無くて。
『ずっと見守ってる。』なんて風の中から聞こえた声がスザクに届いたか否か。

その頬から涙が一筋地面に落ち土の中に吸い込まれていった。



10.10.7

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