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□―握られた指輪…―
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カ『ルー…ファウス…』

ガタガタと震えながらも、尚、カダージュは
ルーファウスに手を伸ばす

ル『…カダージュ…
カダージュ…大丈夫だ。
私はここにいる…。
大丈夫だから…』

その手を握りながらの
ルーファウスの言葉は
自分に言い聞かせる様にも聞き取れた。


―半月前、秘密の社長室―

カ『ルーファウス…ボク最近変なんだ…』

ル『何が?どう変なんだ』

冗談混じりに
ルーファウスが聞く。

カ『力が…出ないんだよ』

なんだそんな事かと
ルーファウスは
安堵の溜め息をもらす。

ル『お前は力がありすぎるからな(笑)出ない位がちょうど良い(笑)』

ルーファウスは楽観視した口調でカダージュに告げた

カ『うん…そうかなぁ…』

カダージュは半ば
納得したように、
それならと放っておいた。

しかし、それは始まりに
過ぎなかった…。
それからカダージュは
徐々に力を失い始め、
今では立っていられない
状態にまでなっていた。

あの後すぐに出張に出てしまったルーファウス。
ツォンがいるからと安心しカダージュを独りにしてしまった…
ツォンからの
『カダージュがおかしい』という連絡で
飛んで帰って来たのだが…

どうして
気付いてやれなかった!?どうして放っておいた!?

どうしてこんなになるまで放っておいたんだ、医者にもそう言われた。医者と言ってもカダージュは思念体普通の医者に診れる訳ではないので正式には科学医療班なのだが…。

ルーファウスは人知れず、神に懺悔でもするかのように祈り続けた。
カダージュが良くなる様にカダージュが元通りに
笑えるように…

しかし神は残酷だった。
ルーファウスの祈りなど
聞き届けないというように

…カダージュは謎の病に蝕まれるばかりだった。

秘密の社長室を離れ、
カダージュの希望で
カダージュはルーファウスの自宅で眠り、
ルーファウスは
いつも側にいた。

しかしカダージュと言えば不安がるようになった。
これがかつて、
ひとつの星を滅ぼそうとした悪魔か、と思う程に。

日に日に弱々しくなる
カダージュを見つめ、
時には隠れ涙した
ルーファウス…。

しかし決して
絶望の言葉は口にせず、
カダージュに温かい
希望の言葉のみを
かけ続けた。

ル『大丈夫だ、カダージュきっと今にまた元気になる…私が言うんだ…間違いはない。
お前はまた元気になる…』

カ『ボクの事、愛してる?ルーファウス…』

カダージュと言えば弱気になり、そればかりを口にする。

カダージュは、自分がこのような姿になる事で、自分が不要になるのではないかと気にしていたのだ。

そんな事はないのに…と
ルーファウスは内心
気が付いていた。

カ『ルーファウス…
ボクたち…永遠だよね?』

今に不満があるとか、
そんな事じゃない、
不安なのだ、ただただ…。

ル『あぁ…永遠だとも…』

ルーファウスは
カダージュに微笑んだ。
優しく、他の誰にも見せないような安らかな笑顔で。

カダージュは頷いてまた
目を閉じる。
安らかに安らかに。



それから1ヶ月立たぬ内、カダージュは死んだ。

「体内のジェノバ細胞欠損による暴走と細胞欠落…」

科学医療班からは
そう言われた。

(ジェノバ…細、胞…?)

ル『今更遅い!!
何だと言うのだ!?今更!遅すぎる!!』

(ジェノバ細胞なら
あったのだ…あったのだ!他ならぬ私の手元に!!)

もしもの時の事を考え
ルーファウスは自身の手元に、いつも小さなアンプルをもっていたのだ。

(それなのに…!!)

あぁ…
最後までお前は
気にしていた…。
私がお前を愛してるかと…無論、愛してる。
今もまだ…。カダージュ…直ぐに後を追えない
私を許せ…
私は…お前がかつてくれたリングの影響で、
寿命でなくば死ねない。
私を許せ…。私を、私を…

私の為だとくれたリングが私を苦しめる。

あぁ、カダージュ…。
このような虚ろな命など、早く終われば良い…。
早くお前の所へ行きたい。同じところへ…。
こんな世界などいらない…

ル『私を、愛してるか…?カダージュ…』

今ではルーファウスが
不安気に尋ねる…
今は亡きカダージュに…
空に…天に…
そうしてカダージュの指輪に口付ける。

カダージュ…
私は…早くお前に…。


会いたいんだ…。


そしたら笑ってくれるな?『遅い』と…


カダージュ…愛してる…

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