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□―紅く咲いた華…―
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ル『カダージュ、そんなにはしゃぐな(微笑)』

カダージュはルーファウスの顔を見ながら微笑む。

これは初めて海に連れて
行ってやった時。

日の下で散々遊んでいたにも関わらず
日焼けしていなくて…
驚いたものだ…。


カダージュ『ルーファウス
凄いおっきい虫〜!』

はしゃぐお前に微笑みながらも、私はお前が迷わないか心配で仕方がなかった。
これは初めて山のキャンプに連れていった時。

すぐ飽きるクセに
その虫を持って返りたいと駄々を捏ねたものだったな


―神羅カンパニー社長室―

ル『ごほっ、はっ!…っ…ゴホゴホ!』

ルーファウスは深い咳をしながらアルバムを捲る。

ベットに横になり、
つい先程までは傍らに
心配そうにするツォンが
立っていた。

カダージュが消えた後、
抑えられていた星痕が
ルーファウスにだけ
現れたのだ…。

ル『かつて願っていた事が…本当になったな…?
カダージュ…』

生前カダージュに言った事

お前のものなら
星痕だろうが、
なんでも
受けとめてみたいと…。

お前は切なそうに
苦笑いをして
誤魔化す様に
私にキスをしたな…
そして言った。


『それだけはあげない』と

あの時の切なそうな顔も、少し震えていた声も、
全ての仕草を覚えている。

私は『そうか』と
笑ってみせたが、
本当に思っていたんだ。

お前の全てがほしいから。見たいから。隠さないで、誤魔化さないで、
無理をしないで、
自分を…追い込まないで
欲しかった。

ルーファウスの身体を覆う鮮やかな痣…星痕…
普通の星痕の色ではなかった。

ル『これは……
お前からの贈り物か?
……などと言ったら…
お前は怒るだろうな…
…!ゴホゴホ!はぁっ!』

もうすぐだ…
もうすぐまた会える…
会いに行く…。
何故だか…
お前に殺される様で
心地いいんだ…。
お前は泣くだろうな…。

お前は今何処にいる?
ほら会いに行くから…。
私を呼べ…。

私の名を…呼んでくれ…

ル『…カ……ジュ……?』

(…ルー…ァ…ス…
…ルーファウス…)


カダージュの声が
ルーファウスを包んだ。

あぁ、早く
お前の頬を撫でてやりたい頭を抱き寄せて
力一杯抱き締めてやりたいキスをして、囁いてやる。

ル『…愛…して…る…カ…ダー…ジュ…』

最早途切れ途切れになる
言葉の欠片…。
それでも記憶は
こんなにもはっきりとある蘇る…
色とりどりに些細な事
些細な言葉たち…

ルーファウスはアルバムの端の方に目を落とした。

カダージュが無邪気に
カメラに向かい
紅い花を持ち、
微笑みながら写っている。
その下には
メッセージが書かれている

〜ルーファウスの為に
      摘んだ花〜


ルーファウスは
写真の花に指を這わせる。まるで掴もうとするように

カダージュの笑顔に
指先を這わし、
ゆっくりと微笑む。

唇だけがゆっくりと動く。

  「あいしている」


アルバムは胸に抱かれ、
社長室には静寂が訪れた。

ルーファウスは
もう苦しむ事はない…
静寂は、
ルーファウスの微笑みと記憶を、
ゆったりと包んでいた。


「あぁ早く…
君の笑顔が見たい…」

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