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□―残像…―
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ル『どうしてなんだ…』
薄暗い部屋の中、
元神羅カンパニー社長、
ルーファウスは呟いていた。

ル『…カダージュ…私は…私はこんな事が…違う…
違うんだカダージュ…』

その顔からは絶望が溢れ、
涙が零れている。
目の前には…カダージュと呼ばれていた身体が横たわっていた。
その身体には鎖が繋がれ、
痣も至る所にあった。
以前の暖かさは消え去り、
ただ冷たい空気がカダージュを包んでいる。
事の発端はある事件だった。

―3ヶ月前―
カダージュはリユニオンを止め、ルーファウスの恋人として、何不自由なく、幸せな生活を送っていた。
しかし、そんな生活をある物が壊した。

―ジェノバ細胞―
再び傾いた星の力が生み出した産物…それがカダージュをリユニオンに導いた。
しかし所詮はまがい物…セフィロスになりきれず、カダージュのリユニオンは最悪の失敗に終わったのだ。
二度目の伝説の戦いは無かった。
しかし…カダージュはその日から消えた…。
ルーファウスの前からだけではなく、
誰の前からも…。

ルーファウスは絶望した。
しかし諦めるルーファウスではない。
神羅のソルジャーからタークスを総動員し、1ヶ月足らずでカダージュの居場所を突き止めた。

しかしそこでまたルーファウスは絶望する。
カダージュは、リユニオンの失敗から記憶を失っていた…。

ルーファウスは諦めなかった。
カダージュの記憶が戻る事を信じ、嫌がるカダージュを無理矢理監禁した。
無論、神羅のものは反対した。ツォン、レノ、その他のタークス達もだ。
ルーファウスは神羅をツォンに任せ、離れた場所にカダージュを監禁し、自分もそこでカダージュの世話をした。片時も離れずに…。
嫌がるカダージュを逃がさぬ様に硬い鎖に繋ぎ、惨めだとは思いながらも全ての世話をした。早く元のカダージュに戻ってほしかったから。

…しかしそれから3ヶ月…
カダージュはルーファウスに相変わらず反抗を見せるだけだった。

変わらない日常…変わらない恋人の姿をした別の人格。ルーファウスは疲れてしまっていた。

ル『何故だ…?何故だ!
カダージュ!
何故私を思い出さない!?
私を嫌いになったのか!?
私を、私をお前は…
本当に忘れたというのか』

カ『…あんたなんか…
知らない…もぅ離してよ』

鎖をじゃらじゃらと鳴らしながら
カダージュはルーファウスを否定する。

ル『私のものだ…お前は…
私だけのものだろう!?』

カ『…僕は…死んだって…
あんたのものなんかに
ならない…』

その言葉で、ルーファウスの中の何かが壊れた…。

ル『お前は…偽物なのか?
だから私を否定するのか?
は…はは…そうか…
だからお前は私を…嫌う』

カ『何を言ってるのさ…』

ル『煩い!そうか!
お前が死ねば!
偽物のお前が死ねば
カダージュは帰ってくる!
きっとそうだ!
はは!ふはは!
そうだ…私のカダージュが…帰ってくる…』

ルーファウスはゆっくりと無防備のカダージュの首に手を伸ばし、…絞めた。

ギリギリという音が薄暗い室内に響く。抵抗出来ないカダージュはただ無抵抗に絞められている。

ル『私のカダージュを返せ
私だけのカダージュだ!
誰にもやらん!!
カダージュ!
カダージュ…―!!』

カ『ぁ゙…あぁ…
…ル…ファウ…ス…―』

ギリギリと音が絶頂に近付き、カダージュは完全に力を失った。ルーファウスが力を抜いたのはそのすぐ後だった。

ル『カダージュ…?』

死に際に呼ばれた名前…
自分の失われた名前…
愛する恋人から忘れ去られた名前…。その筈だった…。

ル『カダージュ…?
か、カダージュ…?
あぁ…あ…』

先程とは打って変わり、おどおどとカダージュの身体に触れる。
…動かない…

ル『あ…ぁ…私は…
何て事…を…カダージュ?…カダージュ…
目を覚まさないか…
起きろ…カダージュ…!』

しかしルーファウスは知っている…もう目の前にいるのはカダージュではない。そう呼ばれていた身体だという事を…。

それでも理解しろというには酷過ぎる話だった。自分で、愛する恋人の命を断ってしまった。

ル『ダメだ…違う…
違うんだ…カダージュ…
私は、私はお前を…
愛して……』

目の前に横たわる
愛する恋人の身体…
鎖に繋がれ、
身体にはいつの間にか付けられた痣が目立つ…。
美しかった身体は、暖かさは、無い…。ただ冷たい空気が恋人に訪れていた。

ル『何故だ…
お前は私を忘れて………
カダージュ…違う…のか…
お前は私を…』


(ゴメンね…忘れてなんかいなかったよ…
ルーファウス…)


ルーファウスの頭にカダージュの声が響いた気がした。

ル『ダメだ!ダメだ…
違う!私のカダージュ!
こんな…こんな姿…違う!嫌だ…カダージュ!』

ルーファウスはカダージュの身体をかき抱いた。
両の手でしっかりと抱え、暖める様に…
しかし温もりは帰らない。

ル『…あ…あぁ…
カダー…ジュ…
私の…恋人…』

ルーファウスはカダージュの鎖を断ち切るとカダージュを手に抱く。


ル『忘れられる訳はない…お前はこんなに綺麗で…
優しい…お前は…
私の恋人…だ…カダージュ…今、やっと…
会いに行くぞ…?』


―だって、思い出の中のお前は、こんなにひどく綺麗に笑うから…その笑顔が焼き付いて離れない…―



ル『カダージュ…私の…』

―パァァン―


薄暗い部屋の中…
静寂に包まれた銀と金が
交わる様に寄り添っていた

まるで昔、愛し合っていた瞬間の様に、
銀は金の腕の中で…
赤に染まり…二人…
 

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