*本棚*

□○君と、ずっといつまでも●
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〜季節の節目は気を付けて〜

「……ちょ、忍……待っ……」
「駄目だ、大人しくしてろ。」
「いや、ほっといていいから……お前にやらせたら……」
とあるマンションの一室。大学で教授をしている宮城と、その部屋に突然押しかけてきた忍はリビングにいた。
「俺の後片付けが大変になる。」
「……。」
気合い十分で腕まくりをする忍は、キッチンに向かおうとした足を止め、宮城を振り返った。
季節の変わり目である最近は気温の変化が激しく、昨日も薄着で大学へ行ったら予想以上に気温が低く、宮城は不覚にも熱を出した。
朝起きて熱が出ていることを自覚し、自覚してしまった熱は宮城から気力を奪っていた。そのため朝食をとっていなかったのだが、宮城の部屋に訪れた忍が朝食を作ると言い出したのだった。
「宮城は寝てて良い。姉貴みたいには出来ないけど、俺だって簡単なものくらい……」
どうやら忍は、先日偶然居合わせた自分の姉に対抗意識を覚えたらしい。忍の姉は元は宮城の妻で、料理が上手い。料理学校に通っていたらしいが、だからといって負けたような気分が気に入らないのだろう。
「迷惑なら……なんか買ってくるけど……」
あまりにも宮城が拒むせいか、肩を落として忍は財布を手に取った。
どうしてこうも突然違うことを言い出すのか。
「いや、そういうわけじゃ……」
忍のがっかりしたような、落ち込んだような顔が宮城は苦手だ。どう接すればいいのかわからなくなり、宮城の語尾が小さくなる。
(あーもう……!)
「……コンビニ飯は食い飽きた。なんでもいいから早く作れ……」
「……え。あ、うん。」
ぶっきらぼうに何か作れと言うと、忍は戸惑いながらも嬉しそうに返事をした。
宮城の方はソファーに横になりながら、忍の居るキッチンとは反対方向を向く。しかし、聞こえてくる調理の音はいつもと同じように何をしているのか分からない、不安になる音ばかりだ。
(まあ、こいつも俺のためにしてくれてるんだしな……)
折角だから今回は忍に任せよう。
目を閉じながらそう思い、宮城は不安を抱えながらも浅い眠りについた。
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