*本棚*

□〜Happy・Halloween〜
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純情エゴイスト
「野分×弘樹」編

「なにやってんだ? お前……」
仕事を終えた大学から帰ってくる。リビングの扉を開けると、まず初めにオレンジと黒に統一された家具が目に入った。
助教授の仕事先である大学へ行く前にはいつも通りにシンプルな色だったはずなのに。
「あ、おかえりなさい、ヒロさん。」
そう出迎えてくれた同居人であり、恋人である草間野分は黒のマントのようなモノを羽織り、夕食らしき皿を持っている。
「今日はハロウィンなんですよ。病院の患者さん達が楽しそうだったものですから。今日はカボチャの料理にしてみました。初めてのものも多いんですけど……」
「そ、そうか……」
テーブルに並べられた見事なまでにカボチャのオレンジで統一された料理に感服する。本当に、昔から料理だろうがスポーツだろうがなんでも来い、だ。
部屋に荷物を置き、食卓に戻るとなにやら薄暗くなっていた。
「ろうそく?」
「雰囲気を出そうかと思いまして。大丈夫です、食後にはちゃんと戻しますから。」
「ふーん。こういうのもたまにはいいかもな。」
薄暗いのは目が慣れれば気にならない。蝋燭の光というのは、意外と明るいモノだ。それに、なんだか雰囲気がレストランのようで新鮮に感じる。
「ごちそうさま。」
食べ終わり、箸を置いた。
「はい、お粗末様でした。」
本当に、箸を付けたおかずはどれも美味しく、初めて作ったとは思えないほどだった。正直に感想を述べると、いつもの満面の笑顔が返ってきた。
「片付けは俺がやるから、風呂、入ってこいよ。」
「あ、ヒロさんちょっと待ってください。」
「ん?」
弘樹が食器を流しに持って行こうと立ち上がりかけると、何故か野分に制された。野分はキッチンへ入っていくとなにやら冷蔵庫を開けたようで、皿に載った何かモノを持ってきた。
「なんだ、それ……」
テーブルに置かれた皿の中身を見て、弘樹は目を丸くした。
そこには綺麗なオレンジ色のスポンジの上に白いクリームが載ったケーキがあった。
「せっかくイベントですから。」
「……」
こんなモノまで用意しているとは思わなくて、弘樹は何も言えずにいた。すると、心配そうな野分の顔が近づいてきた。
「嫌でしたか?」
「っいやッ、そうじゃないッ!」
近くに来た整った顔に思わず顔を紅くし、カップケーキほどの小さなケーキをフォークで刺した。
口に入れると、スポンジの方はそれほど甘くなく、むしろクリームの甘みだけのようで、甘いモノがあまり得意ではない弘樹にはとても美味しく感じられた。
「美味い……」
「良かったです、口にあって。」
「お前は食べないのか?」
野分が持ってきたのは一つだけ。弘樹の分だけしか持ってこなかったようなので、首をかしげて聞いた。
「俺はいいですよ。あ、まだ食べたければ冷蔵庫にありますよ。持ってきましょうか?」
「いや。それより、お前も食えよ。ほら」
フォークに刺した一口サイズのケーキを差し出し、食べるように促した。
「いえ、ヒロさんのために作ったんですから、ヒロさんが全部食べてください。あ、でも味見はしようかな。」
「ほら、口開けろよ。」
野分は正直にその一口を口に入れる。すると、そのまま弘樹の手首を掴み、食べたときのクリームが残ったその唇に自分のそれを押しつけた。
「ん……っ」
今食べさせたばかりのケーキのほどよい甘みが、忍び込んできた舌から伝わってくる。驚いたのは最初だけで、数秒すると弘樹の方からも舌を絡めた。
「ん……ふぅ……ぅん……」
鼻から抜ける声が甘ったるくなったとき、野分はやっと弘樹を解放した。
「ご馳走様でした。」
そう言いながら、口の周りに付いたクリームを舐めとった。
「おま……っ」
弘樹が決まり切った反応で頬を真っ赤に染めると、にっこりと笑顔を返し、野分は自分の作った料理の皿と、弘樹の平らげたケーキの皿を持って、再びキッチンへ戻っていったのだ。

〜END〜



っつーッ///
自分で書いててなんですけど、めっちゃ萌えますッ///!!
上條さ〜んッ!野分〜ww
ストーリー同じで進行するのは難しいかもしれないと思い出した今日この頃・・・
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