*本棚*

□『君と、夜空の下で。』
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〜君と、星空の元で〜



「あ……」
仕事が終わり、マンションの自分の部屋に帰る。「野分! ちょっと!!」
「はい? なんですか、弘樹さん。」
珍しく同じような時間帯に帰ってきていた同居人で恋人の風間野分を呼ぶ。
「すっげー綺麗だぞ!」
空を指差しながら、子供のようにはしゃぐ弘樹。その様子になんだろうと首をかしげながらも、弘樹の指の先を見つめる。
「本当だ。綺麗な星空ですね。」
「だろ?」
漆黒に染まった天に瞬く無数の星は、都会の夜空にしては珍しいほどの数だった。
「きれーだな。」
さっきから表情がゆるみっぱなしの弘樹の隣で、何故か物足りなさそうな表情をした野分。
その様子に気づき、弘樹が声をかける。
「どうした?」
「いいえ、綺麗ですけど……なにか……」
「? なんだ?」
考え込むような顔をして、目線を地に向ける。
何年も見てきて今更だけど、野分はいつ見ても格好いいと思う。横顔にしばし見とれていると、唐突に「ああ、そうか。」と野分が顔を上げた。
「へ?」
「何が足りないのか、わかりました。」
にっこりと笑う野分を見て、「なにが足りないんだ?」と聞こうとする。しかし、その問の全てを口にする前に、野分の唇で自分の口が塞がれた。
「んん……ッ」
満天の星空の下。引き寄せられた唇は、簡単には離してもらえず、かといって抵抗するような理由もないので、野分に求められるまま身を任せた。

「星空より、弘樹さんの方が綺麗です。」
やっと弘樹のそれと自分の口を離したかと思うと、その口から、そんなセリフを吐いた。
「〜〜〜〜っ/// おま・・・ッ! 何言って……ッ///!」
同じ人物に何度も言われたことのあるセリフだが、その度に顔が紅くなるのはそれが野分だからだろう。
真っ赤になる弘樹を余所に、野分は上機嫌で再び星にその漆黒の眼を戻した。
心の中で、ひっそりと一つの願いを思いながら、弘樹も視線を空に戻した。

ずっとこのまま、一緒にいられますように。

〜END〜



―あとがき―
ここには短編をいくつか載せるので、此処であとがき。
コレはブログに載せたヤツですね。
初・純愛小説です♪
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