*イベント小説*

□○今年も来年も、ずっと。●
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純情テロリスト お正月小説

〜今年も来年も、ずっと。〜

「お前……家に帰ったんじゃないのかよ……」
正月早々に、宮城の家のチャイムは訪問者を知らせた。
正月の特番を見るよりも、読まずに溜めている本を読む方が時間の有効利用と判断し、読書に没頭して凝り固まった身体を無理矢理起こし、玄関のドアを開けたのだ。
するとそこにはついこの間引っ越してきたばかりの隣人であり、恋人でもある大学生男子、高槻忍が立っていた。
「……もう正月も半分以上終わったし。これ、姉貴が宮城に手土産って。」
無造作に差し出される容器からは、美味しそうな料理が覗いている。しかし、宮城は呆れたようにため息を吐いた。
「正月くらい、家族で過ごせよ。」
「あんただってここにいるじゃん。」
「俺は年明けの論文がまだだったんだよ。まあいい、せっかく来たんだから上がれ。」
「……おじゃまします。」
忍はドアを閉めると、丁寧にそう言ってから玄関に上がった。宮城が忍の姉からの手土産をキッチンにおいて今に戻ると、既に忍は座り込んでいた。
「昼飯食べたか?」
「食べてからこっち来た。なにしてたの?」
正月という感覚を微塵も感じさせない室内を見回し、宮城がソファーに座り込むとほぼ同時に忍が聞いた。
「読書。とくにやることもなかったしな。」
「ふーん……」
とたんに会話が途切れる。
なんだかその間が居心地悪くなり、宮城は再び本を開いた。
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