*イベント小説*

□『本の整理に10時間。』
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純情エゴイスト 年末小説
〜本の整理に10時間〜

「野分ー! 次こっちの棚、手伝ってくれ」
「はい。せーの……」
1年が過ぎるのは早いもので、弘樹にとってはまだまだ今年、やり残したことが多い気がするのだが、とりあえずその一つであるこの家の大掃除を始めた。
と言っても、男二人だからかそれほど物は多くない。すぐに終わるだろうと高をくくって始めた二人だったが……。
「っと……よし、それじゃあ本を詰め直して……」
弘樹の部屋の本棚の掃除を初めて、既に5時間が経過している。その理由といえば……。
「お、コレこんなところにあったのか。久しぶりに見たなー……」
「ヒロさん、さっきから全然進んでないですよ。今日中に終わらせるんじゃないんですか?」
「あ、ああ、そうだな……」
手に持つ本をほとんどページをめくり、読もうとする弘樹のせいで、なかなか思うように進まない。
野分は既に自分の部屋を終え、リビングとキッチンの掃除も終わらせているというのに、弘樹はまだ自分の部屋すら終わっていなかった。
「終わらないなぁ……」
もともと掃除は好きではない。やれと言われればするが、そうでなければ出来るだけやりたくはない。
「ヒロさん、コレはここに入れますよ。」
「おお……」
本棚を雑巾で拭きながら、気のない返事を返す。何か本棚に違和感を感じ、足下に目をやると、弘樹が持っている本の中では比較的薄い本が一冊、その下に挟まっていた。
「気づかなかったな。よっと……」
静かにその本を引き抜く。本棚が倒れないように気を配りながらそれを引き抜くと、がたんと思ったより大きく本棚が揺れた。
「ヒロさん!」
「う、わぁっ!!」
そのとたんに、棚の上に積み上げてあった大量の分厚い本が、雨のように弘樹に降り注ぐ。
反射的に目を閉じるが、真上から堕ちてきていたはずの本は、頭を庇った自分の腕と、足をわずかに掠った程度で、雪崩が収まった。
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