ギアス小説

□永遠の愛を君に
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静寂な森の中にある教会で、1組のカップルが式を挙げた。普段はひっそりと佇んでいる教会なため、鐘が鳴らされることはなかった。

けれど今だけ、教会の鐘は、彼らのために鳴り響く。まるで、2人の行く末を見守るかのようにーーー




教会の祭壇の前に立つのは、白いタキシードを身に纏った少年と、純白のドレスを身を包んだ少女ーーーではなく少年。
2人を包んでいる潔白の衣装は、まるで彼らを守っているかのように見える。
いつもの血に塗れた彼らの存在を、今だけは、全て無かったかのように。


2人の前に立つのは神父の服装をした魔女。
その瞳はいつもの全てを見透かす眼光は放っておらず、代わりに目の前の少年たちを暖かく包み込むような、慈愛に満ちた光を放っていた。


魔女ーーーC.C.が静かに切り出す。


「汝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しきときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓うか?」

「誓います」


白いタキシードを身に纏った少年ーーールルーシュは抑え切れぬ愛を込めて優しく、されど力強く応える。

それを確認するとC.C.は軽く頷き、視線をもう一人に移す。


「汝、枢木スザクは、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しきときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓うか?」

「はい。誓います」


純白のドレスに身を包んだ少年ーーースザクも、溢れんばかりの愛を込めて、とても幸せそうに、されどこちらも力強く応える。

2人の誓いにC.C.は口元に笑みを浮かべる。


「では、誓いのキスをーーー」


C.C.が促すと、ルルーシュとスザクは向き合い、1度微笑み合ってから口唇を寄せ合った。
神聖なる誓いの口づけを見守るは、神父の役目を受けたC.C.と、スザクの両親的な存在のロイドとセシル、そして、ルルーシュに忠誠を誓う頼れる下臣のジェレミアと咲世子の5人。それ以外には誰もいない。

彼らは微笑みながら、幸せそうな2人の口づけを見守る。少しの哀れみを含みながら。


ルルーシュとスザクの口づけは続く。永遠とその行為を終えないかのように思える程、彼らの纏う空気は神聖なもので、見守る者たちを不思議な気持ちにさせた。
2人の周りだけ、時が止まったかのように誰もが感じていた。

お互いへの愛しさ、労り、願いーーーー様々な想いが溢れている2人の口づけを止める者は1人もいなかった。
否、止めることができなかった。


どれぐらいの時間が経ったのだろう。
止まっていた時間は動き出し、名残惜し気な顔をしながら2人は距離をとる。そしてC.C.へと向き直る。


「それでは、指輪交換を…」


C.C.の言葉に2人はお互いの薬指に指輪を嵌めていく。
お互いの指に煌めくは愛しい相手を想わせる色の石。それは相手の瞳の色をしていた。


「これを以って、そなたたちを夫婦と認める。2人の行く末に幸があらんことを……」


そう締め括ると、C.C.は持っていた聖書を閉じた。




すると、先程までの静寂が嘘のように、みんなが口々に祝いの言葉を述べ、拍手を送った。


「スザク君、結婚おめでとう!」

「ルル陛下も、おめでと〜ぅ!」

「ありがとうございます、セシルさん。ロイドさん」

「ありがとう。いつもは気に障る言い方も、今はとても嬉しいよ」

「ルルーシュ皇帝陛下、ご結婚、おめでとうございます」

「ありがとうジェレミア。これからも俺とスザクのバックアップを頼む」

「はっ!もちろんでございます。スザク様もおめでとうございます」

「ありがとう。これからもよろしく頼む」

「ルルーシュ様、スザク様、おめでとうございます。」

「ありがとう咲世子さん。あなたにはずっとお世話になりっぱなしだな」

「いえ…ルルーシュ様の結婚式を見られてとても幸せです。これからも身の回りのお世話はお任せ下さい」

「ははっ。すまないが、よろしく頼む」

「スザク様も、ご遠慮なさらずにお申し付け下さい」

「ありがとうございます、咲世子さん」


一人ひとりの祝いの言葉に、ルルーシュとスザクは笑顔で応えていった。
4人との会話が終わると、2人の前いたC.C.が優しい笑みを向けて言った。


「おめでとう」

「ありがとうC.C.。神父役まで引き受けてくれて、何てお礼を言えばいいか…」

「気にするな。これでも昔、この手の仕事をやったこともあるんでな。あぁ、それにお礼なら、ピザ10枚とそこの坊やに言ってあるから、スザクは心配しなくていい」

「あ…そうなんだ……」


ちゃっかりしてるなぁ、とスザクは苦笑いで応えた。


「それにしても、本当に結婚してしまうとはな。私はてっきり、寄りを戻すことは無いと思っていたんだが…」

「まぁ、いろいろとあったからな…だが、俺は決めていたぞ。結婚するならスザクと、とな」

「もぅ…ルルーシュったら…」


腰を引き寄せられながら、スザクはルルーシュの発言に赤くなった。


「まったく、お前は出会った頃から変わらないな」

「でも、スザク君も満更でもなかったのよね」

「な、何を言うんですかセシルさん!?」


呆れるC.C.に思いだしたかのように言いだしたセシルに、スザクは過剰に反応しだす。


「あぁ、やっぱり。前から言ってた恋人って、ルル陛下のことだったんだねぇ〜」

「陛下と同じ学校だったんだものね、スザク君?」

「そ、そうですけど…あ、あれは、その…」

「?結局、どういうことなんだ?」


昔話に華を咲かせ始めた3人に、ルルーシュは疑問を投げ掛けた。

するとセシルがにっこりと笑いながら話し出した。


「前に、スザク君に聞いたことがあるんです。『今の恋人とは結婚前提でお付き合いしてるの?』って。そしたら…」

「『彼となら…僕は構わないんですが…』ですってぇ!前からラブラブですねぇ〜」

「そうだったのかスザク!?」

「……///」


セシルとロイドに暴露され、更に顔を赤くしたスザクに、ルルーシュは興奮気味に話す。


「やっぱり俺達は結ばれる運命だったんだな!なんて言ったって、昔から『相思相愛』だったのだから…!!」

「落ち着け馬鹿皇帝」


思ってもいなかったスザクの真意を知り、暴走し始めたルルーシュをC.C.が一蹴りした。
それを見ていた周りの者は、可笑しくて堪らないと笑い出した。
ルルーシュの腕の中にいるスザクも恥ずかしがりながら笑う。
その様子を見ながら、ルルーシュはこの一時の幸せに目を細めた。


笑い合う仲間達と愛する人。この中で自分も笑っている世界が存在すればどれだけ…


そこまで考えて、やめた。
どうあがこうと、自分達の道に変更という選択肢は存在しないのだから。



「ルルーシュ?」



何か考え込んでいるルルーシュに気づいたスザクが心配そうに覗き込むが、ルルーシュは更に強くスザクを抱き、微笑んだ。



「さぁ、式も済んだことだし、初夜と洒落込もうかスザク」

「ば、馬鹿っ…!///」

「本当にラブラブなんですね」

「まったくだ」

「妬けちゃう〜ぅ」

「でもよかったわ。本当に」

「…絶倫が」





そのままみんなで笑い合いながら写真を撮った。
スザクを抱き上げるルルーシュの周りをみんなで取り囲み、全員が幸せそうに笑った。
これは、一時の魔法。
だが、これから先に何が待ち受けていようとも、今日のこの時は変わらない。
確かに今、彼らは幸せだったのだ。





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