テイルズ小説
□忘れていたなら今日すればいい
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「フレン…」
「なんだい…っ!?カロル!どうしたんだいそんなにげっそりして…」
名前を呼ばれたので振り返ると、そこには見るからにげっそりとしたカロルの姿があった。
「ごめんねフレン…ボク、止められなかった」
「何が止められなかった…え??」
カロルの異常な疲れっぷりとよくわからない謝罪の理由を聞こうとしたとき、後ろから何かにガシッと腰を掴まれた。
驚いて振り向くと、よく見知った黒髪が見えた。
「ユーリ?どうしたの??」
「……」
彼はらしくもなく下を向き黙ったままである。俯いているので表情が全くわからない。一体どうしたのか。
もう一度声を掛けようとすると、掴まれていた腰に力が籠もるのを感じた。
次の瞬間、声を上げる間もなく体が宙に浮いた。
「なっ!??」
気付いた時には僕の体はユーリに担ぎ上げられていた。
「行くぞ」
「ちょ、行くって何処に?」
「決まってんだろ。…寝室だよ」
突然の出来事に頭が着いていかない。更にユーリからの言葉の追撃。寝室?そこで何をするんだ…?
ユーリが寝室でしたがるようなことを考え、パッと思いついたのがまぁ…目合。
「っ/// きょ、今日は僕、カロルと相部屋のはずだ!」
「代わってもらった。な、カロル」
「うん。 ごめんね、フレン…」
カロルを見遣ると視線を逸らされた。そうか。このことを謝ってたのか。即座に理解できた。
一つ問題が解決したことで気を抜いてしまい黙っていると、急に視界がぶれ始めた。
どうやらユーリが行動を再開したらしい。って、冷静に分析している場合ではない!
「こら、ユーリ!!そんな勝手なこと許されると…」
「暴れんなよ。……メチャクチャにすんぞ」
「!?」
一瞬横目で見られただけで体が硬直した。目が本気だった。先程から一度も目を合わせなかったことを本気で後悔した。
きっとカロルもこの目で要求…いや、命令されたのだろう。「今日の部屋割、代えてくれ」と。大層怖かったことだろう。きっと身の危険をも感じたと思う。だって僕でさえ感じているのだから。いろんな意味で。
黙々と歩くユーリに僕は何もできなかった。
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