文字
□伊達真
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「ああっ、太くて長い…」
…
「そしてその筋、惚れ惚れしてしまう」
……
「少し、触らせて貰っても宜しいでしょうか?」
………
(なんつー話してんだよ…しかも教室で…)
なんとも言えない目覚めだ。
机に突っ伏していた顔を起こし、首だけ振り返ればそこには童顔の茶髪の知らない奴がいた。
そいつの目線の先には元親の指。
腕を抱えるようにして指の関節をフニフニと触っている。
(どんな卑猥な事してるのかと思いきや、指の話かよ………)
少し興味を削がれたが話題の内容はまだ気になるし、その話をしている奴が気になったので、まだ眠くてダルい体を起こして元親の隣の空席へと腰をおろす。
「お、やっと起きたな。もう昼休みだぜ?」
元親はあいている手で紙パックのジュースを飲んでいるが、中身はもう入っていないらしい。
じゅぅじゅぅと残ったジュースが空気の中で遊んでいる音がする。
「見りゃわかる」
中身は空だろうが弁当箱が入っているだろう布の袋と、パンの袋が机の端に退けられている。
「で、何話してんだ?」
「や、コイツ指が好きなんだと」
「指の関節のこの太さ、流れるような曲線…」
「まっ、俗に言うフェチだな」
(指フェチか…)
俺たちの話も無視するほど好きらしい。
元親の指に釘付けでクリクリとしている目はこれほどとないくらいに輝いている。
「じゃぁ、俺のはどうだ?」
ただ単に気になっただけで、別に他意はなかった。
いや、少しはあったが…。
(だってコイツは元親(の指)ばっか見てるし………!…)
今度はその言葉にこちらを見たそいつに俺が釘付けになってしまった。
今まで元親の手で隠れていてしまっていて見えなかったのだが、こちらに顔を向けたことで顔全体がようやく見えたのだ。
子供っぽい顔だなとは思っていたのだが、やはり童顔だ。
少し丸めのベースに、薄赤く色づく柔らかそうな頬、それに乗っている印象的な紅茶色の大きい眼。
そして最後に、男のくせにぷるっとしている唇!
(俺好みのlipしてやがる…!)
コイツのようにフェチではないが自分の好みくらいある。
上唇は少し厚みがありながらも鍋の蓋形の様に薄く、下唇は中央辺りが膨らみながらも輪郭は滑らかに口端まで続いている、平らだが厚くもあるのが自分の好み。
その唇が目の前にある!
政宗の胸の動悸はうるさいくらい大きく速かった。
「おいお前…」
元親殿の指は真に男らしく、それでいて繊細な指だ。
骨張っているが、筋肉のスジが素晴らしい、そしてそれに続く手首も腕も素晴らしいものだ。
しかもそれを触らせてもらっているなど…!
そうやって胸の中で感極まりながら元親殿の手を観察していたら、元親殿の隣の席に誰かが座った気配と話し声が聞こえた。
だが元親殿の手に夢中すぎてチラリと横目で見ただけで終わってしまった。
(ああぁああ…舐めたい)
自分には好きな指を口に含みたい衝動があるのだが、目の前にある指が素敵すぎて今がまさにその瞬間だった。
「じゃぁ、俺のはどうだ?」
今まで気になっていなかった声が不意に聞こえてきて、指から目を離して見てみれば名前も知らない人の手が差し出されていた。
そしてその手を凝視して自分がそのまま固まってしまったのがわかった。
だって
(綺麗な指ー!)
だったから。
鼓動が早い。
理想通りの長さ、爪の形、太さ、筋、そして袖の間から少し見える手首。
(ああああああ…!)
ガバリとその手に飛びついた。
(顔が、真っ赤になった)
自分の手を見た途端顔は紅潮して、動きがピタリと止まってしまった。
目はしっかりと俺の手を見ている。
(これはもしかして…)
好みの指だった…とか?
「ぅお!」
そうではないか?と思った矢先に飛びつかれた。
「あのっ…!」
手を放られた元親は唖然とを眺め、手を握られた自分も必死に見つめる目を見て心臓が高鳴っていた。
「貴方(の指)が好きです!付き合ってください!!」
震える唇が紡ぐ言葉は予想もしないものだったが、
「…いいぜ…俺もアンタ(の唇)が好きだ」
ふたつ返事で返してしまった自分がいた。
_君が好き_
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