文字

□伊達真
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漂う血生臭さと土埃。




そこに佇むは紅い自分だけだった。


足元には自分が愛した蒼の人。



「…まさむねど、の」



もう呼んでも返ってこない声を期待してしまう。


殺したのは自分なのに。


聞けないとわかっているのに。


頭の隅ではまだ理解しがたい自分がいる。



「まさむね、どの…」



その自分が彼の名を呼ぶ。


返ってはこないのに。


還ってはこないのに…。


声をかける自分が可哀想だと思った。


殺さないで、生かしておけば良かった。


頭の隅の自分為に。






―ぱた…ぱた







「まさっむ、ねっ…どのっ」



駄目だって。



「ひっ…ぐ‥まさっむね、どのっ…」



駄目なのに。



「う、ぁ‥まさむねど、のぉ…っ」



気づいてしまう。


本当は…、泣きたいのは…、理解したくないのは…、





自分自信だって事。






膝を着いてもうさほど温かいく無い躯に縋りついた。


自分の頬を伝う滴は止まる事をしらないように止めどなく流れ続ける。


何度も、何度も嗚咽で詰まりながら愛しい者の名前を呼ぶ。


声も


温かさも


何も


何も


返ってこないのに…!


還ってこないのに……!













「ひっ…ぅ…」



どのくらい経ったのかはわからない。


けれど、真上より少し傾いた所にあった太陽が夕日に変わり、既に沈もうとして
いた。


辺りは橙に染まり、闇も近づいてきた。


止まる事がないと思っていた涙は文字通り枯れてしまった。


まだ消えない自分の中の喪失感を感じながら顔を上げ、政宗の顔を見れば胸が締
め付けられる。


顔から全身を目だけを動かせて見れば、彼が倒れて息絶えるまで握っていただろ
う彼の愛刀が目について…。


何かふと思い出したように自分は腫らせてしまった目を少し見開き、思い詰めた
感情を胸にその刀へと手を伸ばした。


今まで脱力していた所為か、躯が鉛のように重く感じる。


そんな躯に鞭を入れながら刀を手に取る。


近くで見ればもっとよくわかる、手入れされていて、光の走る刀。


美しすぎて、目が奪われる。


目線を光が細くなる刀の切っ先へと流すように移し、


そして、





勢いよく、
自分の胸へと突き立てる。


「か、はっ‥」



皮膚を破り、
肉を裂き、
骨を割り、
脈打つ心臓を刺す。


その反動で口からは血を吐き、
躯は痛みでカタカタと震え出す。


そして、刀は心臓を突き抜け、
また、骨を肉を皮膚を抜け背中へと貫通した。


ドクドクと血が傷から溢れ出すと笑みが零れた。


「ま、さ‥む ね ど の 」



貴方を切って、生き残っていて難だが、



自分は貴方がいない此の世等にいても意味はない。


貴方がいてこそ此の世。




だから






俺は、直ぐに貴方の元へ参ります。








意識が薄れてゆく中。



血が滴る躯を政宗の上へ重ねた。








-終-





BASARAで初めて書いた小説です。
死にネタとか悲哀しか考えられなくって、
毎日考えては自分で落ち込んでた気がします 笑
 

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