文字

□伊達真
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ピアス(政幸)








「おい」


後ろから怒気を含んだ声をかけられた。
いつも聞く、誰だか分かりきった声。


「何…政宗」


振り返った先には眉間に皺を寄せた政宗が立っていた。
ソファーにもたれていた俺は近づく政宗を目で追い体の捩れを戻していく。
そうすれば、政宗はソファーの横まできて俺の上に乗り上げた。


「何じゃねぇよ」


なんだよコレは。と云われてピンと引っ張られたピアス。


「ぃった…」


今日開けたばかりでまだ熱も持っているし、
何より腫れてただでさえ違和感やじわじわと燃えるような痛みを感じているのに…。
幸村は痛みと引っ張られた理由が解らなくて顔をしかめた。


「ピアスが何?」


それに


「誰かさんに片方だけ開けられたから、もう一方も開けた方が良いかなァと思いまして」


神経を逆撫でする事を知っていて態と云ってみる。
政宗はなんのつもりだか解らないが俺の右側にひとつだけ、
俺の意思も関係なく開けた。
その時点で今更体を大切にしろ。
なんて云われても困るし、
寧ろ政宗だって左側にひとつだけピアスを開けているし、未成年なのに煙草を吸っている政宗に云われる筋合いはない。
それに校則でピアスはふたつまでは違反ではないし。


「Ah?」


引っ張られたままではないが、掴まれたままだから喋る度に動く振動で腫れた耳が痛かった。




――ブツッ




「ぃっ………!!」


そこにいきなり焼けるような熱。
耳の付け根ごと持って行かれるような痛み。
耳全体が痛くて声が出ない。


「っ……」


左耳、つまり今回開けた方を押さえて政宗の下で丸くなる。
一瞬何をされたか解らなかった。解りたくもなかったし。


「っ…ぃたい……。なんて事、する…ん、だよ」


ソファーにポタポタと垂れる赤い血を横目に、痛みに涙を浮かべたまま睨みつける。


「お前に傷をつけていいのは俺だけだ」

「…な、に…それ」


痛みを堪えて、熱のままに怒鳴って、切れそうになるのを耐えた。


「お前でも駄目だ。勿論違う奴でも」


そう云う政宗の目は怖い。
でもそれで怯むつもりはなくて、さっきよりも強く睨んだ。


「Ah-n?なんだ、その眼」


手が勢いよく振りあげられて、バチンといい音がした。
そして何度かそれが続いて、そこら辺に飛ぶ血の玉を見ながら意識が遠ざかるのを感じた。












ぐったりとしてしまっている幸村の裂けた耳たぶを消毒液をかけて消毒した。

ソファーに落ちて固まった血をついでにガーゼで数回擦って拭き取る。
まだ少し残ってしまっている血痕と匂いに水拭きしてしまおうと、邪魔な幸村を寝室へと運んだ。







「お前は俺のモノで、俺はお前のモノだ」


白いシーツに包まれ沈んでいる幸村の額に口づけた。














筆頭はきっと幸村とお揃いがよかったんですね!
 

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