WJ dream

□『愛シキ君ヘ…』
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「…欝陶しいな……」



身体に纏わり付く湿気に苛立ちながら、そう呟いた。

いつものように、群れる草食動物共を噛み殺し、独り歩く夕方の帰り道。

…去年の今頃は、君と二人で歩いていたのに。



『空を見上げて雲を視る

 雲は限りなく灰に近い色

まるでイマのボクの心みたい』



どんよりとした、今にも泣き出しそうな空。

なんだか見透かされているようで、目を逸らす。

こんなに憂鬱な気分になるのは、久しぶりだ。

君が隣にいて…笑っていた時には、周りなんて見えていなかったから。

…君の笑顔が僕に向けられる度、それだけでいいと思ったんだ。

……君しか、見てなかったんだよ。

知らないよね?



『アナタに出会って

 ココロ有彩有色』



僕らしくもないのは、わかってる。

でも、仕方ないよね?

君がいる事で、僕の世界は色付いてたんだから。



『アナタと別れて

 ココロ無彩無色』



思い出さえ、君がいなくちゃ、色を失ったままだ。



『アナタと過ごした鮮明なトキ

 イマでは白黒写真』



…あの笑顔も、僕を呼ぶ声も、どこかへいってしまった。



『思い出したら込み上げてくるナミダ

 アナタに会えない悲しさ

 ナゼアナタは逝ったんだ?

 ボクを遺して』



ねぇ、この僕から光を奪えるのなんて、きっと君だけだよ。

僕に光を与えたのも、君だけだったんだから。



『ヒカリを無くしてしまった視界』



あぁ、とうとう空が泣き出した。

学ランが涙を吸って、徐々に重くなっていく。

視界が霞む。



『なにもかも視えずにただ呆然とするしかない

 空虚な心体』



もう二度とこの腕が、君を抱きしめる事はない。

君と二人、同じ時間を過ごす事はない。

それでもまだ、君を求めている。

ただ、ただ、君が足りなくて。

僕の世界は、動かなくて。

泣ければいいのに。

心に空いた空間を、埋める術を知らない僕は。

記憶の中で、微笑んで、僕を呼ぶ君を追い掛ける。




『余 り に も 亡 く し た も の は 大 き か っ た』




冷たい空の涙に紛れて、頬を温かいモノが伝う。

あぁ、僕の涙か。

君を失ってから、初めて泣いたよ。

傘をさしていないから、誰にも気付かれないけど。

姿は見えないけど、どうか、僕の記憶の中からは消えないで。

どうか、どうか、
僕の心に、生き続けて。

そしてこの空の涙が止んだら、君が好きだと言った、鮮やかな、光り輝く空を見せて。

いつか僕の涙が止まったら、一瞬でいい、笑って。



ボクは愛していた…アナタのコトを



本当に、愛していたよ。

………君だけを。



“代弁者は空の涙”



…君への想いは、尽きる事なく降り注ぐ……





         〜END〜





心友からの提供ネタを使用。送ってくれた詩が素敵過ぎたので思わず書いた物です。

※作中の詩の著作権は、
   【渕入倥】
 となっております。
なので持ち帰り、無断転用は禁止とさせていただきます。

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