□お菓子はいらない!悪戯させろ!
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「お菓子持ってないですよね?
持ってないですよね?じゃあ悪戯ですね!」



何で菓子持ってないのがそんなに嬉しそうなんだよ。逆だろ。
……………………悪戯?
悪戯って、悪戯?



「やだ」



きっぱりと言い放つ。
菓子なんか普通持ち歩かねぇよ。
しかも菓子が貰えないから悪戯するなんてそんなの逆恨み以外の何者でもないだろ。
それを聞いたモヤシは、牙を見せながら不満げな声を洩らした。



「何でですかー、ハロウィンの決まりなんですよ?」


「そう言われて去年ラビに顔に落書きされた。もう懲り懲りだ」



それを聞いた途端モヤシがクスクス笑い始めた。
おいこら想像すんな。
しばらく口元に手をあて笑っていたモヤシが目線をこちらにあげ、まだ少し可笑しさを含んだ声で言葉を紡いだ。



「でも、それでも駄目ですよ」


そう言いながら近寄ってくるモヤシには何とも言えない威圧感があって、後ずさるしかなかった。
狭い部屋では直ぐに壁と背中合わせになり、モヤシは笑みを深くした。
俺はふっとある事を思い出し、拳をモヤシの胸板に突き出す。
モヤシはそれを俺のささやかな抵抗とでも思ったのか、俺の手首を掴んで横にやった。



「受け…取れっ」



その台詞で一つの仮定に結び付くアレン。
俺の拳を急いで引き寄せる。
開いた掌には、真っ赤なカボチャが笑っていて、下に小さくstrowberryと書かれている普通のハロウィン用のキャンディ。
それを見た瞬間モヤシの顔は落胆に顔を染めた。



 
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