□繋ぎ目
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「神田…っ、かんだぁ…っ」


走っても走っても最愛の人は見つからない
気付けば涙が溢れてきて
水滴が人の波に消えていく
マナを破壊したあの時の孤独感が押し寄せて潰されそうになって
色んな人にぶつかりながら駆けて
見つからない事に絶望を覚えた
とうとう立ち止まって子供の様に大声を上げて泣き始める
うっとおしそうに顔を顰める人々なんて目に入らない
求めるのはあの人だけ
拭っても拭っても止まらない涙に
僕自身も呆れたが
止まらないものは止まらない
こんな事してたって神田は見つからない事は解ってるのに
只々零れる涙を拭い続ける


不意に引っ張られる右手
引かれた方へと顔を向ければ
焦りに酷く色を染めた神田の顔
掴まれた右手をそのまま神田の方に引かれ神田の胸に収まる
きつく抱き締められた事に
嗚呼彼も僕を心配してくれていたんだと
改めて互いの愛の深さを感じて
自分も抱き締め返し神田に抱き締められたまま肩を震わせた

すっぽりと神田に収まってしまった己の身体に少し悔しさを感じて
いつかこの身長を抜かしてやろう
なんてくだらない事を考えた



「か、んだっ、かんだぁ…」


「心配を、かけるな」



相手の存在を確かめ合う様に口付け
深く 深く 神田は確かに此所に居る
周りは僕らには目も貸さない
僕らにとっては 何て都合の良い
神田の顔
潤む瞳
そこに居るのは僕で
時々唇を離せば荒い息

良かった、神田だ


 
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