長編物語
□◆想い◆
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未だ拘束は解けない。
それはその機会を与えられながらも、自らが破棄して来た結果である。
「これでいいんだ…」
呟きが薄暗い空間に僅かに響いた。
ヒヤリとした床が、触れた部分から体温を奪う。
「これで、やっと…」
黙秘を続けていれば、いずれ口封じの為に誰かが殺してくれるだろう。
学園を失踪してから、当然行く宛てなど無かった。
死ぬべきなのか、生きるべきなのか、それすらもわからなくなった。
一人になれる場所を探してゲットーに潜り込めば、同じような虚ろな目をした人間がたくさんいた。
けれど、彼等は被害者、自分は重罪人。
肩を並べる事など許されない。
何処にも、自分の居場所など無いように見えた。
それでも本能の求める“生”に、すがりつくように生き長らえてきた。
だけど、これで…
空腹を感じながら、静かに目の前の何処か一点を見つめる。
飢えて死ぬのが先か。
殺されるのが先か。
これで、全てが終わる…筈だった。
それなのに。
「貴方は…ライ…!」
天はそれを許さなかった。