長編物語
□◆エンテレキー◆
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スザクはこの所、騎士の仕事が忙しいという。
その為、今日もノヴァが朝からずっとシミュレーターに乗りっぱなしで、午後三時過ぎ、ようやっと解放されてから、シャワーで汗を流した後、いつもの木陰で彼は涼んでいた。
心地好い風を感じながら本を開く。
今日借りてきた本は物理学の書。
綺麗に整理され並べられた数式を見ていると、頭の中の秩序も保たれる様で、何故だか落ち着いた。
「ねえ、キミ」
普段誰かに話しかけられる事はないと言うのに。
その上、聞いた事のない声がして。
何だろうと顔を上げると、見たことの無い少女が、長い髪を揺らしながら此方を大きな瞳でじっと見つめて立っている。
「何か…?」
「え?…あの、え〜っと…。
…い、今、お時間ありますっ?」
何故か、声を裏がえらせ、顔を赤らめながら聞いてくる。
「勤務時間は終えていますが…貴女は…?」
いぶかしんで見つめ返すと彼女は更に顔を赤くして、返事もしどろもどろになってしまった。
「…?」
もう一度、何事かと問おうとした時。
「よ〜しそれじゃあ連行決定!!みんな突撃〜!!」
後方の草むらからかん高い声が響いて、ゾロゾロと人影が現れた。
「あっ!?もう〜会長!
どうせすぐに出てくるなら、会長がやって下さいよ、ナンパ役〜」
先陣切って此方に向かってくるブロンドの髪の女性を見て、目の前の少女が赤く染まった頬を膨らませる。
「ノヴァ…ごめん…」
「……スザク…?」
聞き知った声に目を遣ると、困った顔のスザクがロープぐるぐる巻きで現れた。
「まさか、そんな……」
困惑するノヴァを中心にミレイ達が包囲網を展開するなか、ルルーシュとカレンだけ、その場で動けずに立ち尽くしていた。
◆エンテレキー◆
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