本2(満)
□続#自転車第十話
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♭恰次
今、早耶は試験を受けている真っ最中だろう。
講義を聞きながら、ちらちらと時計を気にした。
大丈夫かな、
落ち着いているな、
まず、高校に着いたかな。
なんだか、保護者、いや、本人より緊張してるみたいだ。
早耶なら平気だ。
頑張れ。
目を閉じて、指輪に向かって念じた。
居眠りと勘違いされて指されてしまった。
夕方になった。
さすがに終わっただろうと思い、ケータイに手をのばす。
いや、待て。
疲れはてていたら迷惑じゃないか。
ここは、向こうから連絡を待つべきなんじゃないか。
ああ、もどかしい。
ケータイを片手に悩むのも何なので、いないとは思いつつも公園に行った。
いた………
驚いて立ち尽くしていたら、早耶から手を振ってくれた。
「早耶、どうして…」
「試験終わったら気が抜けて、ぼーっとしてたらここにいたの。」
「終わってからずっと!?風邪ひくよ。」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。」
早耶が座っている隣に俺も腰かけて気づいた。
「あ、新しいチャリ買ったんだ。」
「うん。ないと不便だろって。」
「春休みになったら、自転車でどこか行くか。」
「無事に高校受かってたらね。」
「…自信ないの?」
「……できなかったような、できたような。」
あくまでもさりげなく、手を握った。
「早耶なら、大丈夫。平気だよ。」
「………ありがと。」
少し照れたような声が返ってきた。
来て良かった。