本2(満)
□続#自転車第九話
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♭恰次
今、早耶の家に来ている。
そして、目の前では神山と早耶の友達という尾崎さんが一問一答をしている。
「はい、じゃあ次の問題。
1867年に大政奉還をした将軍は?」
「えーっと、徳川けいき!」
「……どういう字?」
「これ【慶喜】」
「まぁ、あってるけどさ、読み仮名一応『よしのぶ』だからな。」
「それぐらいわかってますー。だって覚えやすいじゃん。」
神山に、早耶が友達と受験勉強してて、家庭教師頼まれたから来いと言われて来てみたのだ。
「恰次ー。ここどうやって訳したらいいの?」
ちなみに、早耶は英語をやっている。
二人で勉強してるくせに、別々の教科をやり始めたというので、俺が呼ばれたみたいだ。
「ここがandでつながってるから、まずそこで分けて考えたらいいんじゃないか?」
「そっか」
書いてあった答えを消し、もう一度考え直している。
その手には、ちゃんとあげた指輪がはまっている。
半分満足。
もう半分は、俺の手には何もないということ。
早耶のは運よく不思議な店で無料でもらった(?)が、まだ大学生である俺に金はない。
と、早耶の視線が俺にそそがれていることに気がついた。
「どうかした?」
「えっ、いや、何でも……」
もしかしたら、早耶もそのこと気にしてるんじゃないかなぁというそぶりをよく見かけるようにもなった。
でも、俺の勘違いで変に「俺、金ないから」とか言うのもなぁ。
「……ねぇ、変な訳になっちゃった。」
「次ー、何年に、誰が、浦賀に来たでしょう?」
「えー、一問一答じゃないのー?」
とりあえず、今は目の前に集中しておこう。