本2(満)
□続#自転車第七話
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♭早耶
今日も大学でコンサートの練習をしてきた。
だんだん曲の感じが二人で合って良い感じ。
大学に通ううちに、恰次の友達とも顔見知りになってきた。
大学生に囲まれていると、一歩早く大人になった気分がする。
一番意外だったのは、高山さんと友達になれたこと。お姉さんができたみたいで嬉しい。
徒歩通学もなかなか健康的で慣れてきた。
家を出る時間をずらしたら恰次が合わせてくれたのも、少し申し訳ない気がしたけれど、やっぱり嬉しい。
そんなルンルン気分で帰ってきて見た、机の上の山のような高校の資料。
あぁ……そうですよね、そろそろ決めないとですよね、ホントに。
「早耶〜おかえり〜っ。」
珍しく母は仕事を定刻に仕上げてきたらしい。
いつも終わらないって言って残業してるのに。
「ただいま。どうしたの、この資料。」
「尾崎さんにもらったのよ。
ねぇねぇ、ここの学校なんてどう?制服可愛いじゃない。早耶にぴったりだと思うんだけど」
母は満面の笑みで開いたページを向けてきた。
「え、そんなことで決めちゃだめでしょ。」
「そう?あ、あともう一つ。こっちも可愛くない?」
「……うん、そうだね。」
一人で勝手に制服の品定めを始めた母は置いといて、私もぱらぱらめくってみた。
うーん、だめだ。
いまいちピンとこない。
「ねぇ、早耶はどんな学校がいいなーって思ってるの?」
「どんなって……とりあえず、治安がよくて、家から近くて、頭がついていけるとこ?」
「じゃあここじゃない?」
と見せられたのは、まるきり地元の高校。
うちの生徒の大半が集まる。
「そこはなぁー」
「じゃあこっち。電車通学になるけど。」
「通学にお金かけるのもなぁ…」
「じゃあどこがいいの。
そんなこと言ってたら、私立になるわよ。」
「私立ってお金かかるからやだ。」
「じゃあ……ここはっ?」
私は母に差し出されたパンフをめくった。
ふーん…
あ、
「芸術祭なんてあるんだ。」
一番そこに目がひかれた。
「そうそう。芸術にも平等に力をそそいでるんだって。」
へー、と思いながらそのまま読み進めて、ある単語で止まった。
『××大学とのコラボ演奏』
「うっそぉ!恰次が行ってる大学じゃん!」
「あら、そうなの?じゃあ丁度良いわね。そこにしなさい。
まぁ、65分授業だったり電車でそうねぇ……15分くらいかかるから、通学に一時間はかかっちゃうかもしれないけど。」
「うん、ここに決めた。」
「あらあら、さっきは『そんなことで決めていいの?』なんて言ってたくせに。」
それとこれとでは話が別。
うわ〜、まさかの、まさかの××大学に関係していた高校があったなんて!!
「あ、そだ。」
私は電話の子機がある二階へ駆け上がった。