本2(満)
□続#自転車第六話
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♭早耶
びびびびっくりしたぁ。
顔の火照りを気にしながた次のページをめくった。
改めてみると、恰次の手、すっごい綺麗……。
うわぁ、変態か、私は。
「そろそろ、合わせてみる?」
「うん。」
合奏でも合唱でも、やっぱり音楽を誰かと合わせるのって楽しい。
呼吸も心も一つになって、綺麗な音を奏でる。
しかも、相手が好きな人ならなおさらだ。
幸せにひたっていたら、ドアの鍵が開く音がした。
あれ?こんな時間に誰だろう。
「早耶〜?帰ってきてるのか?」
そして部屋に入ってきたのは父だった。
父はドアを開けた瞬間硬直した。
恰次も緊張した面持ちで視線をちらちら向けてくる。
「お父さん、どうしたの?こんな時間に。」
「あ、あぁ、ちょっとこれから飲みにいくから車を置きに来たんだ。
えーっと、そちらは誰かな?」
「うぁ、えーっと、こちらは、神にいの友達の大沢恰次さん。今度、一緒に大学のコンサートに出ることになったから、練習してたの。」
「こんにちは。」
あえて『彼氏』とは言わなかった。
けど、さすがに悟っちゃうよねぇ。
父の後ろに確実に『がーん』という文字が浮かび上がっていた。
「あぁ、そうかそうか。まぁ、ゆっくりしていってくれ。
じゃ、また出かけてくるよ。」
「いってらっしゃーい。」
この後飲み会でよかったね。
お父さん、ごめん。