本2(満)
□続#自転車第五話
1ページ/9ページ
♭早耶
良いことがあったら、悪いことがあるのは当然だ。
三者面談があることをすっかり忘れてしまっていた。
「えー、と。まぁ、成績はそこそこ落ち着いてますね。もうちょっと頑張れたらなぁ、と。」
「えぇ、えぇ。この子、特に英語が苦手で……。
知ってます?この前のテストで英作文の欄をほとんど白紙で出したんですよ?」
おかあさんっ。
そんなの担任に言うことじゃないでしょ。
しかも、担任の先生は国語だし。
「あぁ、そうなんですか。じゃあ、次回頑張らないとね。
で、志望校は……まだ決まってないのかな?」
「……はい。」
私は母をちらりと見ながらうなずいた。
「もう三年生だからねー。
どこかここが良いなぁ、とかもないの?」
「音楽が有名なところか、普通にいくか迷ってます……」
「早耶はピアノが上手なんだから、音楽の道を進んじゃえばいいじゃない。」
「そんな、上手くないよ。」
特に、親が子をほめるのはあまり信用ならない。
「面接の準備とかも入るから、学校見学とかにも行って、早目にね。
でも、自分の進路なんだから、慎重に考えるんだよ。」
「はい。」
そうして、やっと苦痛の面談時間が終わった。
「じゃ、私もう少し仕事してくるから。」
「うん、バイバイ。」
うるさい母もいなくなり、一息ついたら、クラスメイトの尾崎美佳(おざきみか)に捕まった。
あれ?私の前に面談終わったんじゃなかったっけ?
「よっ、早耶、面談終わった?一緒に帰らない?」
「うん、いーよ。」
少し勝気なところがある美佳とは何かと気が合うから、恰次さんに会う前は一緒に帰ってたりしてたけど、最近は滅多になくなった。
話はさっきの面談の話から始まり、三年生で付き合い始めた人たちの行く末までに発展した。
「ああいう人たちってさ、高校生になったらどうするんかね?」
「さぁ……別れちゃうんじゃない?」
「早耶は?最近、一緒に帰ってくれないじゃん。誰か好きな人できたの?」
ドキドキッ
「ま、まぁ……」
「だいじょーぶ。誰にも言わないって。
もしかして、公園で一緒にいる人?」
「何で知ってるの!?」
「一部の女子で噂だよ。」
あちゃあ〜。
まぁ、市内だし、仕方ないよね……
「で?で?どうなん?」
「う……ん、清純にお付き合いをさせていただいてます。」
美佳はヒュウッと口笛を吹いた。
「すっごぉい。年上かぁ……。
まぁ、あたしも、付き合うとしたら年上が良いなぁ。なんか、みんな子どもっぽく見えちゃって。」
私は思わずふきだしてしまった。
「何言ってんの。私たちだってまだ15じゃない。」
「へへ、まぁね。
でも、大人しそうな早耶がねぇ……なんか取られた気分。」
「今度勉強に付き合ってあげるから。」
「ホント!?それ、助かる!今やってる数学さ、ぜんっぜんわかんなくって!」
そして私たちは道を分かれた。