本2(満)

□続#自転車第五話
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♭早耶

良いことがあったら、悪いことがあるのは当然だ。

三者面談があることをすっかり忘れてしまっていた。

「えー、と。まぁ、成績はそこそこ落ち着いてますね。もうちょっと頑張れたらなぁ、と。」

「えぇ、えぇ。この子、特に英語が苦手で……。
知ってます?この前のテストで英作文の欄をほとんど白紙で出したんですよ?」

おかあさんっ。
そんなの担任に言うことじゃないでしょ。
しかも、担任の先生は国語だし。

「あぁ、そうなんですか。じゃあ、次回頑張らないとね。
で、志望校は……まだ決まってないのかな?」

「……はい。」

私は母をちらりと見ながらうなずいた。

「もう三年生だからねー。
どこかここが良いなぁ、とかもないの?」

「音楽が有名なところか、普通にいくか迷ってます……」

「早耶はピアノが上手なんだから、音楽の道を進んじゃえばいいじゃない。」

「そんな、上手くないよ。」

特に、親が子をほめるのはあまり信用ならない。

「面接の準備とかも入るから、学校見学とかにも行って、早目にね。
でも、自分の進路なんだから、慎重に考えるんだよ。」

「はい。」




そうして、やっと苦痛の面談時間が終わった。

「じゃ、私もう少し仕事してくるから。」

「うん、バイバイ。」

うるさい母もいなくなり、一息ついたら、クラスメイトの尾崎美佳(おざきみか)に捕まった。

あれ?私の前に面談終わったんじゃなかったっけ?

「よっ、早耶、面談終わった?一緒に帰らない?」

「うん、いーよ。」

少し勝気なところがある美佳とは何かと気が合うから、恰次さんに会う前は一緒に帰ってたりしてたけど、最近は滅多になくなった。

話はさっきの面談の話から始まり、三年生で付き合い始めた人たちの行く末までに発展した。

「ああいう人たちってさ、高校生になったらどうするんかね?」

「さぁ……別れちゃうんじゃない?」

「早耶は?最近、一緒に帰ってくれないじゃん。誰か好きな人できたの?」

ドキドキッ

「ま、まぁ……」

「だいじょーぶ。誰にも言わないって。
もしかして、公園で一緒にいる人?」

「何で知ってるの!?」

「一部の女子で噂だよ。」

あちゃあ〜。

まぁ、市内だし、仕方ないよね……

「で?で?どうなん?」

「う……ん、清純にお付き合いをさせていただいてます。」

美佳はヒュウッと口笛を吹いた。

「すっごぉい。年上かぁ……。
まぁ、あたしも、付き合うとしたら年上が良いなぁ。なんか、みんな子どもっぽく見えちゃって。」

私は思わずふきだしてしまった。

「何言ってんの。私たちだってまだ15じゃない。」

「へへ、まぁね。
でも、大人しそうな早耶がねぇ……なんか取られた気分。」

「今度勉強に付き合ってあげるから。」

「ホント!?それ、助かる!今やってる数学さ、ぜんっぜんわかんなくって!」

そして私たちは道を分かれた。
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