本2(満)
□第六話
1ページ/7ページ
私は、その日の夜、また一馬と一緒に浜辺にいた。
決心は、変わってない。
お姉ちゃんは、春香ちゃんのところに行っているはずだ。
この術を使うということは、人魚の力を少し放出するということだから、体力的に私1人では2人に魔法をかけるのはキツイだろう
ということで、2手に分かれたのだ。
「今日は満月だな。」
「うん・・・そうだね。」
ただ、やっぱりテンションが下がってしまう。
「どうした?元気ねぇなぁ。」
「ううん!何でもない!」
私は、どうにか笑顔を取り繕った。
そして、これ以上私の気持ちが揺れないように、もうやってしまうことにした。
「ね、目、閉じてて。」
「うん?」
一馬はおとなしく目をつぶった。
私は、一馬の手をとると、額と額をあわせて、ささやいた。
「人魚は人に知られてはいけない。我この誓いを守るもの。
汝の記憶よ、誓いを破りしその記憶、穢れを洗い清め、忘却の彼方に沈め。
・・・・さよなら。」
私は一馬の手を離し、様子をみた。
どうやら、少し眠っているらしい。
私は、一馬が目を覚まさないうちに海に潜った。
一馬はゆっくりと目を開けた。
どうしてこんな所で寝ていたのか、全くわからない。
何だか、とても大切なことのような気がして落ち着かない。
「あれ・・・・?」
一馬はぼうっとする頭を抱えながら、家に帰ることにした。