本2(満)
□第十話
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オレは早耶ちゃんが教室を出て行っても、追いかけなかった。
自分には、そんな資格内と思った。
「おい、恰次。」
名前を呼ばれて顔を上げると、神山がいた。
「さっき、早耶が物凄い勢いで駆けてったけど・・・何かあったのか?」
「・・・早耶ちゃんのこと、振った。」
「・・・そうか。まあ、いいんじぁねぇの?もともと、気はなかったんだろう?」
「んー、というより、考えたことなかった。早耶ちゃんのこと、好きとか、嫌いとか・・・。」
「はあ!?お前、ドンカン!?」
「いや、そりゃあ気付いてたけど・・・逃げてたのかな?オレ。」
「なんだよ、急にマジになって。」
「だって、きっと、傷つけちゃったし・・・。」
「傷つくもんなんだよ、恋なんて。オレなんか、潔く振られたぞ。」
「なんだよ、それ。」
それから、二人で少し笑った。
お互い、どこか寂しげだった。