本2(満)
□自転車六話
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恰次さんが来たその日の夜。
私はいつも通りお母さんと夕飯を食べていた。
神にいは、いつも通り自室にこもってバイオリンを練習している。
「ねえ、早耶。」
「何?」
「あの・・ええと、誰だっけ?
ほら、あの、事故の人。」
「こ・・大沢さん?」
「そうそう。その人。
今日、うちに来たったんだって?」
「うん。」
神にいだな。
いつも余計なことばっかり言いつけて。
「また会うの?」
「さあ?」
私は机の引き出しにしまったメモのことを思い出した。
そこには、神にいと大沢さんが通っている大学の地図が書いてあった。
「会わないようにしなさい。」
「!?何で!?」
「だって・・・その・・・大沢さん、女遊びが激しいって、神山君が・・・。」
後で殴ってやる。
「そんなことないよ。親切な人だよ。クッキーもって来てくれたし、ピアノ聴いてくれたし。」
「とにかく、気をつけなさい。」
私は、お母さんに返事をしないでご馳走様をすると、神にいの部屋に向かった。