本2(満)

□第七話
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二学期

奈々はいつも通り登校した。

「おはよー。」

と言いつつ、自分の机にランドセルを置くと、教室の一番端っこに落ち着く。

そこにはすでに大悟がいる。

けれど、彼の席ではない。

空白の席。

でも、何故かそこに足が向いてしまう。

そこへ、建が加わった。

誠も来た。

………何かが足りない。

奈々は直感的に思った。

けれど、その何かがわからない。

この席に、誰かがいたような気がするんだけど………
私を更正させた、大切なだれかが………




大悟は不思議だった。

何で、俺はここで奈々たちを待っていたのだろう。

別に、自分の席でもいいはずなのに………

それに………

大悟は思いきって奈々に聞いた。

「なぁ、俺、奈々に告ッタよな?」

一拍おいて、奈々はようやく思いだしたようだ。

「そういえば、あたし、大悟を振ったんだよね。」

『振った』という言葉に大悟が傷ついたとは知らずに、奈々はまた考え込んでしまった。

大悟は、がっくりしながらもやはり、記憶が所々抜けていることに気がついた。
特に、六年生になってからの記憶が。




建はフワフワしていた。

何で俺は学校に来ているんだろう。

何で奈々や大悟や誠と仲が良いんだろう。

何で親への気持ちがこんなに寛容になっているんだろう。

わからないことが多すぎて、頭がパンクしてしまったらしい。

何で…………




誠は全体的に違和感があることに気がついていた。

もちろん、自分の中にもだ。

前ほど金に興味がなくなった。

もっと友達がほしいと思った。

それに、皆妙に浮わついている。

女子は、新しい総理大臣の一和という人がカッコいいとかそうでもないとかで盛り上がっている。
けれど、時々ボーッとしている。

男子は、新しく出た、自分たちと同じくらいの少年がチカラを使って悪を退治するゲームの話が多い。
でも、ボーッとしているやつもいる。

何か、変だぞ…………




四人がそれぞれの考えを口に出そうとした時、チャイムが鳴り、先生が入ってきてしまった。

仕方がないので、大人しく自分の席に戻った。

「はーい。それでは、皆さんに楽しいお知らせがありまーす。転校生でーす!
さ、入って入って。」

クラスがざわつき始めた。

入ってきたのは、色白で、茶髪の綺麗な女の子だった。

その子が入ってきたとたん、教室がシーンと静まり返った。

まるで、ジグソーパズルが完成したときのような、気持ちのいい静けさ。

「この子の名前は雪『セツ』ちゃん。
両親を早くに亡くされていて…………」

奈々は、もう先生の説明なんてどうでもよかった。

だって、知ってる。

あたし、知ってるよ。

不思議だ。

会うのは初めてのはずなのに、この子、知ってる。

奈々は席を立つと、先生が止めるのも聞かずに、雪の前に立った。

そして、手を差しのべて言った。


「一緒に楽しいことしようね。ユキ。」


その手を、雪もしっかり握った。











おかえり


ただいま






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