本2(満)

□第五話
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今までじっと耳を澄ませていた雪が顔を上げた。

「どうやら、着いてしまったみたいね。」

「あーもーっ!!やっぱ、あたし、行ってくる!」

奈々は怒りをあらわにし始めた。

「どうやって行くんだよ。こっから何キロあると思ってンだよ。」

大悟は一応止めるが、奈々がこうなるとどこまでも突っ走ってしまうのは承知している。

「風に頼んで飛ぶッ!!」

「目立って捕まるわ。」

「絶対捕まんない!」

雪はサッと手を動かし、奈々が出ていこうとする前に風で縛った。

そこに、誠がポツリと言った。

「ね、建の母親の名前って……」

「美加子よ。それがどうかしたの?」

雪がすかさず答えた。

「……その人は、国会にいないよ。」

「「は!?」」

大悟と奈々の声がハモった。

「ちょっと気になって思いだしてたんだ。その人、美加子さんは、国会にはいない。
僕の家で僕の母の下で働いている。」

「じゃあ、建は無駄足ってこと………」

奈々の怒りが最高潮に達した。

「あっ」

ほんの一瞬、雪が気を緩めたすきに、奈々は校長室を飛び出してしまった。

「待て!俺も行く!」

「駄目!」

大悟は、雪の大声にビックリした。

「駄目よ。大悟。」

「でもっ」

「もっと、確実な方法があるわ。」

雪は、受話器を取った。

プルルルル
プルルルル

トントントントン…

雪が苛々と机を叩いているのを見て、大悟は逆に落ち着いた。

珍しいな、こんなに動揺している雪は初めてだ。

「どこに電話する気なんだ?」

「一和さんのとこでしょ。」

誠が変わりに答えた。

「国会にいるとしたら、あの人しか頼めない。」

ガチャ

『はい。』

「雪です。今、お電話しても大丈夫ですか?」

「ああ、ちょうど昼休「至急、ご自分の車に戻ってください。建が貴方の車に乗って、国会に行き、母親に復讐しようとしているんです。
が、幸いにも母親は別の所にいます。だから、建が他の人に捕まらないうちに、早く見つけてください。
あ、あと、奈々もそっちに飛んでいっているので、二人まとめて見つけて、こちらに連れてきてください。」

『……あ、ああわかった。建君と奈々ちゃんだね。必ず連れて行くよ。』

雪の剣幕に押されたのか、少し間が空いた。

「お願いします。」

ガチャン

「ふぅー。」

雪はゆっくりと息を吐くと、背もたれに深く寄りかかった。
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