本2(満)

□第六話
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ただ、奈々だけがそこに残っていた。

「じゃ、僕はそろそろ戻るね。」

一和は雰囲気を察して部屋から出た。

二人きりになった校長室。
最初に口を開いたのは奈々だった。

「……本当に、行くの?」

「ええ。」

雪はきっぱりと奈々を見つめ返した。

「ユキ、策があるって言ったよね。それ、何?」

「ごめんなさい。今はまだ、教えられないの。」

「それは、言ったらあたし達が悲しむから?」

「………そうね。」

再び訪れる沈黙。



「ユキ、消えちゃやだよ。」

「え………?」

奈々の言葉に、雪は少し驚いた。

図星だったのだ。

「やっぱり、いなくなるんだ。」

「……ちゃんと帰ってくるわよ。」

雪はわざと明るく言った。

「ホント??」

「えぇ、約束する。」

スッと、雪の小指と奈々の小指が絡んだ。

「じゃ、あたし、当番だから。
またね。」

バタン

奈々もいなくなった。


校長室には、雪一人だけになった。


背もたれに深く深く沈んだ。


そっと目を閉じれば、雫が一粒、二粒と頬を転がり落ちた。


そして、小さく、悲しみを帯びた声で呟いた。









ごめんなさい………
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