本2(満)

□第四話
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「大人に電話して、電気やガスを止めて、何が目的?」

誠は手近なソファーに座った。

「君たちがなかなか行動しないから、こちらから攻めて、早く降伏してもらおうと思って。」

「違うでしょ。」

誠の肩がビクッと震えた。

「何が?!」

抗議したのは奈々だった。

「誠が大人たちと連絡とってたのも、そりゃ驚いたわよ。
でも、だからこそ、さっき誠が言ったことは間違ってないと思うけど?
こいつは裏切り者なんでしょ?」

しかし、雪は首を横に振った。

「どういう心境の変化かは知らないけど、でも、誠の目的はそうじゃない。
だって、電気やガスを止めたら、分が悪くなるのは政府じゃない。」

「どういうことだ?」

建は首をかしげた。

「保護者から見たら、これは酷すぎると思うんじゃないかしら。
自分の可愛い子供たちに、大人気ない。子供たちがせっかく話し合いで解決しようとしてるのに、貴方たちは何をしてるんだ、ってね。」

誠はため息をついた。

「全く、君には敵わないね。
でも、別に君たちを『友達』だと認めたわけじゃない。
政府の方で、反対派の勢力が強くなってきそうだったから、そろそろ乗り換えかなと思って。」

「あら、あの人もなかなかやるわね。」

一和は今頃くしゃみしてるかもしれない。

「じゃ、僕はこれで。」

「えぇ。」

誠は校長室をでていった。

「まさか、あいつがなぁ………」

大悟は感心し、ハッと思い出した。

「あ、俺、みんなの様子を見に行くんだった。
じゃ、また後でな。」

大悟はばたばたと廊下を走っていった。

「電気とかで思い出したんだけど、そろそろ食料もなくなっちゃうかなぁ。」

奈々がそう呟いた。

「そうね。じゃ、連絡しましょう。」

奈々が不思議そうに見つめている中、雪は電話をかけた。

トゥルルル トゥルルル トゥルルル ガチャ

『はい。』

「おはようございます。雪ですけど、今お時間はありますか?」

『まあ……最近寝不足なんだ。手短に頼むよ。』

「食料がもう少しでなくなりそうなんです。持ってきてもらえますか?」

『食料!?一体、どのくらい沢山だと思ってるんだ……』

「反対派の勢力が強くなってきているじゃないですか。
それに便乗してしまえば、好アピールになると思いますけど。」

『全く、君には敵わないね。』

本日二回目のセリフ。

『わかった。準備ができしだいそっちに行くから。とにかく、もうゆっくり寝させてくれぇ〜〜………』

ピッ ツー ツー ツー

「ゆっくり寝させてくれって………今何時だと思ってるのかしら。」

「で、どうだった?」

奈々が興味津々に聞いた。

「準備ができしだい来るそうよ。」

「さっすがぁ〜!」

もうこれではどっちが大人かわからない。

「で、貴方たちにはバリアの練習に専念してもらおうと思ってたんだけど………建は?」

「え?」

気づかないうちに、二人きりになっていた。

「あれ?……ま、後で探しに行くか。ホントは、皆が揃ってる時に渡したかったんだけど………」

奈々はポケットを探ると、中身を雪に差し出した。

「はい、これ、ユキの分。」

雪に渡されたのは、白と水色で編まれたミサンガだった。

「あまり上手くできなかったんだけど………」

奈々は照れつつも、自分の右手首を見た。

そこには、オレンジとピンクで編まれたミサンガが結ばれていた。

「上手い下手なんて関係ないわ。すごく、すごく嬉しい。
ありがとう。」

雪はそう言って微笑むと、自分の手首にも、ミサンガを結んだ。
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