本2(満)

□第三話
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奈々と建は、さっきの屋上に来た。

「さっさとやって、さっさと終わらせるんだから。」

「俺だって、奈々から教わるなんて、早く終わらせるさ。」

二人はにらみ合った。

「じゃあ、やりましょ。まず、手のひらにチカラをこめて。」

建は言われた通りにした。
炎の球ができた。

「次に、それをどんどん大きくして。」

炎の球が、ゆっくりと、確実に大きくなっていく。

が、

ジュッ

と嫌な音がして、焦げた臭いがした。

「わー!!ストップ、ストップ!」

屋上に黒い焦げ目ができてしまっていた。

「ちょっと、何やってんのよあんた!」

「何って……言われた通り、大きくしていっただけだ。」

「言われた通りって……周りにチカラの影響を及ぼさないやり方、知ってるでしょ!?」

「………何それ?」

「知らないの!?」

「知らねぇよ。」

「教わらなかったの!?」

「教わるわけねぇだろ。学校行ってなかったんだから。」

「あ………」

そこで二人とも黙ってしまった。

「ごめん。」

奈々はなんとなく謝った。

「別に。」

少々気まずい沈黙。

「早く練習しようぜ。」

「うん。えーっと、じゃあ、周りにチカラを及ぼさないようにするやり方を教えなきゃね。」

奈々は気を取り直すと、また雷の球を出現させた。

「あたしもさ、最近ユキに教わったばっかりなんだけどさ。
とにかく、優しい気持ちになることが大切なんだって。」

「へー。」

「……何よ、その馬鹿にしたような目は。」

「や、次々。」

「……で『護りたい』とか『傷つけたくない』っていう気持ちでチカラを使うと」

奈々は、一気に雷の球を大きくし、学校を取り込んだ。

「誰も傷つくことなく、チカラを操れるってわけ。」

「はー。なんだ、簡単じゃねぇか。」

建は、再び炎の球を作った。
そして、勢いをつけて大きくしていった。

ジュッ

「はい、ダメー。」

「何でだよ!?」

「別のこと考えてたんじゃないの?」

「奈々の説明があいまいなんだ!」

「何それー!あたしのせい!?」

「ああ、そうだ。」

「建が集中力ないのが悪いんじゃない!」

バチバチッ

二人の間に火花が散る。
と、奈々がひらめいたように手を打った。

「ね、一回手合わせしない?」

「手合わせ?」

建は首をかしげた。

「そ、つまり、バトル。」

「良いじゃねぇか。ついでに、何か掛けようぜ。」

「あ、いいね、それ。じゃ、あたしが勝ったら、二度と教え方に文句言わないで。」

「よし、俺が勝ったら、雪とお前、交代しろ。」

二人は少し間合いをとった。

「ルールは、どちらかが床に倒れたら負けね。」

「おう。」

そして、一拍間をおき、一気にチカラをぶつけた。

ドーン

どちらのチカラも互角だった。

「いっけぇ!!」

奈々はそう叫ぶと、雷の球を続けざまに撃った。

「はっ。」

建は鼻で笑うと、全部炎の球で消滅させた。
そのまま、炎の球で攻撃する。

奈々は水のチカラを使い、炎の球を消滅させ、建をびしょぬれにした。

「わっ、冷てっ。」

「ラッキー♪濡れたわね。」

奈々は意地の悪い笑みを浮かべると、雷を放出しようとしたが、建も水のチカラをとばしたので、奈々もずぶぬれになってしまった。

「アブなっ。」

奈々は慌てて水から手を離してとびのいた。
その後ろでは、建が木の棒を持って待ち構えていた。

「ちょっと!あたし、女の子だよ!」

「問答無用!」

建は思いっきり木の棒を振り下ろしたが、奈々は風を使い、ギリギリのところでかわした。

建は弾みで頭を打ちそうになり、体勢がくずれた。

「いまだっ。」

奈々が木の棒を振り下ろした。
建はそれを自分の棒で防いだが、しびれるような感覚が走った。

「こっちだって!」

建も負けじと雷を流す。

「っ!」

奈々は飛びのいた。建も体勢を立て直す。

「すごいわね……あたしとここまで戦えるなんて。」

「復讐のために鍛えてたからな。」

そして、二人がまさに一騎打ちをしようとしたとき、床からツルが伸びてきて、あっという間に二人をがんじがらめにしてしまった。

「そこまでだよ、二人とも。」

建と奈々が振り向くと、そこにはメガネをかけた男の子がいた。

「誰?」

「がり勉!」

建がぼやくのと同時に、奈々が叫んだ。

「ちょっとぉ!何すんのよ!ほどきなさいよ!」

「大悟君から頼まれてね。自分が行くまで抑えててくれって。」

メガネ君―誠は、冷静に言った。

「なぁ、誰?」

建が聞くと、奈々は不機嫌そうに答えた。

「うちのクラスの『がり勉』本名は誠。スッゴク頭がいい金の亡者。」

「失礼だなぁ。」

「あーもー!何で止めるのよ!せっかく面白い所だったのにぃ。」

「だって、頼まれたし。」

「あんた、お金じゃないと動かないでしょ。」

「小さい子がうるさいんだ。自分の利益にもなることは無料で動くよ。」

奈々がまだ不機嫌そうにツルと格闘していると、大悟が屋上に上がってきた。

「よ!サンキュな、誠。」

「別に、僕も調度良かったから。」

誠はそのまま屋上を去った。
と、同時に建と奈々にからみついていたツルがほどけた。

「よし、じゃあ早速さっきの続きを……」

奈々がサッと構えるのを、今度は大悟が止めた。

「むぅ、大悟までぇ。」

大悟は奈々を見てちょっとためらったが、結局、軽くしかった。

「だ・か・ら、さっきも誠が言ってたように、小さい子が怯えるんだよ。だから、今日は俺に免じて、な?」

結局最後は頼む形になってしまったが、奈々は渋々了解した。

「しょうがない、ちゃんと練習しますか。」

「あのままやってたら、絶対俺が勝ってたしな。」

「は?あたしの勝ちに決まってるじゃない。」

バチバチッ

大悟は大きなため息をついた。
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