本2(満)

□第二話
1ページ/6ページ

「さてと、これでいっか。」

奈々は、教室の机を全て壁よりに積んだ。

「ええ。」

雪は服についたホコリを払いながらうなずいた。

他の面々は、それぞれ家に戻り、立てこもりに必要そうな物を取りに行っていた。
もちろん、『立てこもる』なんて親に言うはずがない。
何か聞かれたら『思い出として学校でキャンプをすることになった』と言うのだ。
納得してくれなかったら、強引にでも家を抜け出す、ということになっている。

校舎は四階建てなので、一階の職員室などは、雪たちの会議室。
二階には1,2年の男女と6年を数名。
三階には女子。
四階には男子が生活すると言うことになっている。
食事は調理室を使い、5,6年で当番制にすることになった。

「じゃあ、ユキ。あたし、食糧とか持ってくるね。」

奈々は早速、三階の窓から飛ぼうとしていた。
風のチカラを使い、一階まで一気に降りようというのだ。
いくら風のチカラが苦手な奈々でも、これくらいならできる。

「私も行くわ。」

そして、奈々と雪が一緒に飛ぼうとしたとき、大悟が入ってきた。
もちろん、建も一緒だ。

「おーい、準備できたか?ってぇ、終わってるな。」

「うん、今家に帰って荷物とってこようと思ってたとこ。」

奈々が答えた。

「じゃあ、オレ達は残ってた方がいいな。リーダーが全員抜けたらヤバイだろ。何かすることあるか?」

「特にないわ。行きましょ、奈々。」

雪はそう言うと、一足先に飛んだ。

「じゃあね、大悟!建!」

「おう!」

「あ、あぁ……。」

奈々は軽く手を振ると、雪の後を追った。

建はどぎまぎしながらその姿を見送った。
まさか、自分に話が振られるとは思ってもなかったのだ。

「……することはないって言われたけど、一応見回りでもしとくかぁ。な?建。」

「そ、そうだな。」

まだ、さっきの会話の衝動から抜け出せない。

「何おどおどしてんだよ、『リーダー』しゃんとしろ、しゃんと!」

大悟はそう言いながら建の背中をバシバシ叩いた。

「いっ……いてぇなぁ!!」

建は背中をさすった。

「ハハッ。……仲良くしような。」

「……ああ!」

建は少しずつ、『友達』に慣れていった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ