本2(満)
□神の子第一話
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「ユキっ!」
奈々は三つ葉小の体育館に着くと、真っ先に雪のところへ行った。
「奈々。いい加減、『セツ』ってちゃんと呼んでくれない?」
「そんなの後々。ねぇっ、さっきの知らせ、デマじゃないんでしょ?」
奈々は意気込みながら聞いた。
「ええ、ホントよ。」
その答えを聞くと、大きく息を吐き出し、身震いした。
「アハ♪昔の血が騒ぐわァ……」
雪はスイッチが入った奈々をほっとくと、近づいてきた大悟の方を向いた。
「よぉ、雪に奈々。」
「大悟……夏休み中にまた背が伸びたんじゃないの?」
雪は大悟を少し見上げながら言った。
大悟は六年の中でも身長も体格も大きい方だ。なので、よく中学生とみ間違えられる。
「そぉかぁ?それより、三つ葉小の全員を集めてどうするんだよ。」
雪はそれには答えず、黙って合図をすると、ステージに上がった。
ここ、日本では、日本だけ、さらには、子供だけ、特別なチカラを持っている。
風・火・水・木・雷
この五つのチカラを操れるのだ。
日本の子供達はそれらの声を聞き、そして、それらを個人差はあるものの、自由に操ることができる。
しかし、そんなことができるのは子供のうち。
だんだん年をとるにつれ、そのチカラは弱まり、二十歳になるころにはすっかりなくなる。
ちょうど、小学五年生〜中学三年生がチカラのピークに達することがわかっている。
なぜ、チカラが日本の子供だけにあるのかは、まだ解明されていない。
しかし、相当古くからあるものだということはわかっている。
大人になった子供は、昔を懐かしがり、チカラを使える子供をうらやましがった。
しかし、誰もが皆、そういうものだと思い、あきらめ、仕事や家事にいそしんできた。
今までは。
今日、国会で『子供チカラ奪還法』と『世界支配方針』が可決された。
まとめてわかりやすく言えば、子供からチカラを奪い、世界支配をするために利用しようというものだ。
表向きは、正式に多数決によって決められたことになっているが、裏では金が回りに回り、緑首相の思い通りに可決された。
世界は再び大きな戦争が起きようとしている。
そのために、こっちがやられる前に仕掛けてやろう、という建前で可決された。
本来、このことはまだ秘密だった。
しかし、風はどこにでもはいることができる。
またたく間に日本中の子供達の知るところとなり、それぞれが通っている学校に集まり、自分たちの身をまもることにしたのだった。