ありますや
□自転車
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「わー、すごーい。」
入ってきてまず、少女の方が声をあげた。
「ホント、雑貨みたいだね。こんなところにあるかなぁ……」
メガネをかけた青年が、少し不安そうに店内を見渡した。
「いらっしゃいませ。」
今度は普通のお客様な気がして、少しホッとした。
「あ、すいません、楽譜、ありますか?」
「楽譜、ですか?」
あったっけなぁ……
見たような気もするし、見てないような気もする……
「できれば、ピアノとフルートのための『エリーゼのために』と『ゴリーウォーグのケークウォーク』が良いんですけど……」
そんな限定されると、ないような気がする。
「早耶、ほんとに大丈夫?」
眼鏡の人に心配されてしまった。
けれど、隣の少女は明るくうなずいて
「うん、大丈夫!」
と言った。
来たことでもあるのかな?
「そういう楽譜が欲しいのかね。」
小松さんが私の隣に来た。
「はい!」
少女はすごく欲しそうにうなずいた。
「よし、じゃあ、探してみよう。こっちへ来なさい。」
「え?」
小松さんは待たずに店の奥に消えてしまった。
少女のほうは今にも行きたそうだけど、眼鏡の人は心配そうだ。
「店の奥にもまだたくさんあるんです。でも、小松さんだとどの楽譜かわからないと思うし……奥は少し狭いのでできれば一人でお願いします。」
「あ、そうなんですか。」
なんとなく納得してくれたらしい。
「私、言ってきます。それで良いですよね?恰次さん。」
「じゃあ、俺はこっちで待ってるよ。」
そして、早耶と呼ばれた少女は、軽くてを振って急いで奥に消えた。
小松さんは、きっと、普通のお客さんにはチカラをあまり見せたくないだろうから、少女だけ行かせたけど……良かったよね?
一人で残った、恰次さんと呼ばれた青年は、アクセサリーを並べてあるところを熱心に見ていた。
も・し・か・し・て
「贈り物ですか?」
私は、思い切って聞いてみた。
「あ、はい。」
当たったー。
じゃあ、送る相手は、きっと、さっきの早耶さん?
「指輪を探してるんです。」
指輪かぁ。
私はそこでがっかりした。
どうみても、二人は兄妹。
「さっきの子に、似合うやつ、ないかな?」
………今なんて?
「あ、さっきの方と、お付き合いされてるんですか?」
「そう見えませんよね。」
「あ、いえ、その……」
逆にこっちが赤面してしまった。
やっぱり、人間見た目じゃわからない。
よくよく思い出してみれば、早耶さんは、このひとのことを『恰次さん』って呼んでたな。
「指輪、ねぇ……」
アクセサリーの所には、どれも大き目の飾りがついている。
さっきの子は大人しそうだから、あまり派手なのはなぁ……
しかも、大量にあるので、もう、どれがどれだか……
「あ、これなんてどうですか?」
そんな中、やっと見つけたのは、ちょっとアンティークなもの。
全体は銀色で、朱色の綺麗な宝石が小さく飾られている。
デザインも少しうねったりしていて、繊細だ。
「あぁ……!これ、良いかも!」
早速、恰次さんはじっくりとその指輪を眺め始めた。
「……あれ?裏に何か彫ってある……。」
「え?」
「………Saya&Koji……」
「ええっ!」
「見て!見つかったよ!」
ちょうどそこへ、早耶さんんと小松さんが戻ってきた。
恰次さんは、サッと私に指輪を渡した。
「にゃ〜ん。」
と、良いタイミングでシッピーが散歩から帰ってきた。
「あー!かわいい〜。」
早耶さんは、早速シッピーに夢中に。
あの子、何かチカラを持ってるんじゃないの……?
と思いつつ、私は急いで小松さんを引っ張って、少し二人から離れた。