本3
□双人の村
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それから数ヶ月後、シルドが心配した通り、隣国が、この平穏な地を支配した。
村人は、奴隷同然に働かされ、隣国に駆り出された。
あんなに豊かだった土地がどんどん荒廃していった。
その矢先である。
隣国の王が息子に政権を渡したのだ。
しかし、息子になったからといって村人の生活が楽になる訳ではなく、むしろ、さらに酷くなっていった。
シルドが死んでから一年経とうというとき、隣国の中で、シルドやシルヤの故郷の人たちで、同じように奴隷同然に働かされていた人たちが、反乱軍を上げた。
そこには、もちろん村人たちも混ざっており、少数だが、王に反感を持っている兵士や民衆も加わっていた。
その数は、物凄く、あっという間に元々の軍を打ち破り、政権交代となった。
最後まで隣国の兵士として戦っていたシルヤは、国は滅びなかったが、我が身はすでにボロボロで、隣国から追い出され、フラフラと村に戻ってきた。
意外にも、村人たちは温かくシルヤを迎えた。
その優しさに触れたシルヤは、やっと、シルドのために涙を流した。
そして、これからは、この村を『双人の村』として、一生守ると誓った。
が、シルドの呪いは、これだけではなかった。
翌々翌年頃、シルヤは村人の一人と結婚し、双子の赤ん坊を授かった。
その赤ん坊は、シルヤとシルドのように、男女の組み合わせだった。
赤ん坊はスクスクと育ち、少女は清く、働き者で、明るい子に。
少年は、たくましく、賢く、活発に。
双子は幸せに包まれて育った。
村も、豊作が続き、平和な時間が過ぎた。
が、双子が十六歳になったとき、異変は起こった。
急に雪が降り出したり、日照りが何週間も続くようになったり、いきなり地面が割れたりし始めたのだ。
シルヤはすぐに何が起こったかを悟った。
あの呪いは本物だったのだ。
が、シルヤはなかなか娘を手放そうとしなかった。
村人たちの間には不満が募り、暴動を起こしたり、他の国に移住したりする人が出てきた。
それでも、シルヤは娘を放さず、部屋の奥に幽閉してしまった。
村は平和の跡形もなく荒廃した。
そんな状態が一ヶ月ほど続いていた雨の降っていたある日、いつものように、少女に食事を運んできた少年は、ドアを開けて驚いた。
そこに、少女の姿はなかった。
少年はすぐに母親と父親に知らせに行き、あちこちを探した。
少女はすぐに見つかった。
シルドが殺された、村の中央で、自分で胸を刺して死んでいた。
少女は雨にさらされ、冷たくなっており、助からないことは一目瞭然だった。
いつのまにか村人が回りを取り囲み、静かに黙祷をしていた。
少女は手厚く埋葬され、また村は平穏を取り戻した。
それから、双子の男女が生まれるたびに、少女が十六歳になった時、生け贄を捧げる習慣ができた。
もちろん、何回も呪いを解こうとしたり、娘を隠してしまう親もいた。
が、そのたびに不況が訪れ、村人はやっきになって少女を探し、殺した。
そうして千年余りが過ぎ、今日にいたる。