本3
□エピローグ
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朝
今日は引っ越しの準備で忙しい。
これから、ここから離れた親戚の家で暮らすのだ。
『陽明、もうすぐトラック来るって。』
光輝がフワフワと漂いながら僕をせかす。
「わかってる。」
あの日以来、僕は幽霊が見えるようになった。
と、言っても、まだ光輝しか見ていないので、本当に見えるのかどうかは定かではないが。
あの事件については、魔界の『お片付け部隊』やら、松橋先生やらの力で、表向きは、強盗殺人事件という結果になり、光輝が起こした事件は、犯人は自殺した、という形で終った。
カルミナは、きっと、狭間の谷で魂をすり減らしているだろう。
ちなみに、僕から天界や魔界の記憶、つまり、シガルやラギー、ベルツたちと過ごした記憶は消えなかった。
本当は、消さなきゃいけないらしく、嫌がる僕を前にラギーが手をかざしたのだが、何故か、消されなかった。
消さなかったのか、
消えなかったのか、
よくわからないけど、これはこれで良かったな、と思う。
光輝の痛みを、例え少しでも、分かち合えるから。
ブロロロロ………
車が近づいてくる音がする。
『荷物、全部持った?』
「うん。
………行かなきゃ。」
新しい家へ?
ううん、
新しい世界へ
胸のペンダントがほのかに光った。
end