本3
□第六話
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天界の連結の間を探すのは結構大変だった。
僕らはそろって落ち込みながら歩いていたので、回りの景色をてんで覚えてなかったのだ。
散々道を迷ったあげく、ようやく最初の、ベルツのおばあさんがいる家に戻れた。
家の前には子供たちがいなくなっていて、おばあさんは一人で花に水をあげていた。
ベルツの足はそこで止まってしまった。
「なあ、陽明。」
「うん?」
「俺、今、後悔してる。
悪魔なんかになるんじゃなかったって。」
「そう。」
「だけど………悪魔になってなけりゃ、陽明に会えなかったよな。」
「そうだね。」
「おう。そうだよな。」
「……行こう。」
「ん。」
それ以上、ベルツは後ろを振り返ることはしなかった。
また狭間の谷を―今度は何もなかった―通り、僕らは魔界に帰ってきた。
そこにはシガルとラギーが険しい顔をして待っていた。
「ただいま。」
「陽明、悪い知らせだ。」
ラギーが穴を閉じている間、シガルがそう切り出した。
「光輝が……カルミナが人を殺した。それも、大勢の目の前で。」
目の前が真っ暗になった。
「幸いっつうか、警察には捕まってない。
ただ……問題点が少し。
どうやら、ナイフとかではなく、カルミナが光輝の身体を使って素手でやったらしい。普通の人間にはできないことだ。だいぶ話題になっちまってる。
後、殺した人数もそうだが、殺り方も尋常じゃない。
五人殺したそうだが、見た目じゃ人だと判断できないくらい酷く殺ったらしい。
………おい、聞いてるか?」
いや、僕は光輝が人殺しの片棒を担いだということだけで頭が一杯だった。
「シガルは単刀直入に言い過ぎだ。」
ラギーがため息をつきながら言った。
「心の準備ぐらいさせれば良いものを。
で、天界の方はどうだった?」
僕は何も答えられない。
見かねたベルツが代わりに話してくれた。
「やはり、両親には会えなかったか……で、その『幸せのペンダント』というのは?」
僕は手も動かせない。
仕方なく、僕が首からかけて服の中にしまっておいたペンダントわベルツが取り出して見せた。
「ほう、これが……確かに、微弱ながらも、天使の清い力が込められているな。」
「綺麗すぎて気持ち悪り。」
「それはそうだ。天使の力は、下手をすれば我々を死に至らしめることもできるのだから。逆も可能だから滅多なことで争わないが。」
僕は相変わらずボーッとしていた。
最早、頭の中は早く光輝を助けること、いかにカルミナを痛めつけるかで一杯だった。
「おーい?陽明〜?」
シガルが痺れを切らして僕を呼んだ。
「そろそろ現実に戻ってこい。
これから今までで一番重要なことを話し合うんだから。」
僕はボンヤリと頭を上げた。
「明日、カルミナに奇襲を仕掛ける。」
一気に目が覚めた。
「ホント!?ホントに!?
何時に!?どうやって!?光輝をちゃんと助けられるよね!?」
興奮して詰め寄る僕を、シガルは何とか宥めた。
「まあ、落ち着けって。
さっきな、悪い知らせを聞いた時と同時に、カルミナの居場所が随時、捕捉できるようになったっていう報せも入ったんだ。
相手の居場所が分かれば襲うなんて簡単だ。
で、その方法なんだけどな、単にカルミナの回りを取り囲むようにして生け捕りにしようってことになった。」