本3
□第五話
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最後に、僕はある部屋の前に連れて来られた。
「今度はどこ………?」
僕はいい加減疲れてきた。
「ここは、シガルさんの部屋だよ。案内が終わったら、連れてこいって言われてたんだ。」
そう言うと、ベルツはやや緊張気味にノックした。
返事がない。
もう一度やってみる。
やっぱり、ない。
「いない……のかな?」
「多分……」
ベルツはゆっくりと、取っ手を押した。
鍵はかかっていなかった。
ギィ………
「お邪魔します……。」
部屋の中は、空だった。
僕とベルツは何となく息を吐き出した。
「会議中なのかな?」
僕は言いながら、部屋を見渡してみた。
シガルの性格がそのまま反映されているような部屋だった。
つまり、派手。
壁には、今まで集めてきたと思われるアクセサリーがジャラジャラしていて、床には豪華な絨毯。真っ黒だけど、ふかふかしてそうな布団。棚の中は、ガラス細工でいっぱい。クローゼットもあったけど、あえて中は覗かない。
「んじゃ、俺はこれで。」
ベルツが後ずさるように帰ろうとするのを、慌てて引き止めた。
「な、何だよ。」
何故だかわからないけど、ベルツはシガルを怖がっているみたいだった。
とりあえず、今はそんなことはどうでもいい。
「ね、天国に行くにはどうすれば良いか知ってる?」
「天国?」
ベルツは訝しげに首をかしげた。
僕は、ベルツには話しても良いかな、と思い、何故行きたいのかを話した。
話していくうちに、ベルツの紅い目がどんどん大きくなっていった。
「お前なぁ、まあ、行けなくはないけど、でも………お前の目的は、姉ちゃんを助けることだろ?
そんな悠長なこと、してられんの?」
「それはそうなんだけど、僕、もう1つ目的があるって言ったじゃん。
お姉ちゃんが何であんな奴と契約したのか、それが知りたいんだって。」
「そりゃ、陽明を助けるためだろ?」
「それだったら、お金稼いで、もう少し良い病院に移すとか、手術するとか、他に方法があったはずなんだ。」
フム…と唸り、ベルツは考え込み始めた。
「で、それが何で陽明の両親に結び付くワケ?」
「いやあ、それは……当時の僕の病状を詳しく聞いて、どのくらい僕はヤバい状況だったのか聞こうかな、なんて。」
「やっぱり、会いたいだけなんじゃねぇか。」
「ゔ〜ん。」
確かに、その気持ちもあるけど………
「ま、いいや。隙を見て、いつか連れてってやるよ。」
「ホント!?」
「ああ。だって、天国に行きゃあ俺の母ちゃんも……は、ないな。婆ちゃんか誰かいるかも知れねぇし。」
「やった!ありがとう!」
「おう。じゃあ、またな。」
そして、今度こそベルツは逃げるように帰っていった。
僕は何気なくベッドに腰かけて、そのまま寝っ転がった。
ベッドは、確かにふかふかしていて、とても気持ちが良かった。
今日の疲れが出たのか、僕はスウッと眠りに落ちた。
お母さんやお父さんに会えることに、胸をふくらましながら………