本3
□第三話
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ラギーが帰ったあと、とりあえず、両親の身体をどこかに隠すことにした。
理由は簡単。
人間の僕が、協力することになったので、これから、悪魔達が、人間界でいう………実況見聞?が、しやすいようにするため。
「腐っちゃわない?」
僕は、壁についたシミを何とかして落とそうと、奮闘していた。
「大丈夫だ。ちゃんと結界を張ってある。
それより、陽明、そこどいてみろ。」
僕がおとなしくどくと、シガルは壁に手を当てた。
たちまち、シミは跡形もなく消えてしまった。
「すごーい!」
「だろ?」
シガルは得意そうに鼻を膨らますと、床の血もきれいにしてくれた。
どうやら、褒めると乗せられるタイプらしい。
「ねぇ、シガルさん。」
「シガルでいい。気色悪い。」
「……じゃあ、シガル。
悪魔って、どういうモノなの?」
そう言ったとたん、僕は頬を思いっきりつねられた。
「悪魔をモノ扱いするたぁ、いい度胸だな。え?」
「ふぉめんなしゃい。」
んでもって、短気。
「まぁ、いい。説明してやろう。」
シガルはやっと手を離すと、リビングの机にどっかりと座った。
「人は死んだら、まず、地獄か天国に行く。
現世で罪を犯せば地獄。
特に普通に生きていれば天国。
ここまではいいな?」
僕はシガルの前に椅子を持ってきて座りながらうなずいた。
「地獄に来た奴は、現世での罪をそこで洗い流す。地獄の王の許しを得るまで、な。」
そこで僕は学校みたいに手を挙げた。
「はい、陽明君。」
「罪を洗い流すって?
地獄の王って誰?」
「罪を洗い流すっつうのは、まー、人間界の地獄絵みたいなことを実際やるんだな、うん。
地獄の王って言うのは、お前たちは閻魔様とか呼んでるが、俺たちは『血の神』って呼んでる。」
「『血の神』??」
「そこらへんも後で説明する。先いくぞ。
で、罪を洗い流し終わったら、悪魔になるか、死神になるか、天国へ行くかが決められる。」
「へぇ、その場で生まれ変われないんだ。」
「そうだ。血の神は、罪を司ってる神だ。生まれ変わらせるのは、生を司ってる天国の王、命の神だ。
悪魔になったやつは、さっきラギーが言ったように、不幸と平等の釣り合いを保つために働く。
天国に行くやつは、死んで直接天国に行ったやつと同じ道をまた開かれる。
天使になるか、天国でずっと暮らすか、生まれ変わるか。
ま、そんなこんなで、人間は死んだ後の道が大幅に決められてるってことだ。」
「へぇ〜。」
ボタンが押したい気分になってきた。
「ね、死神って何?」
「あれ?言わなかったか?
死神は、名前のまんま、死を司ってる神だ。
いつ、どこで、誰が死ぬかは死神によって決められる。
「……じゃあ、僕のお父さんとお母さんも……」
「いや、あれは例外だ。
だから、カルミナはすごく重い罪を負ってるんだ。」
「え!?」
「カルミナは、死神によって定められていない命をとった。
ましてや、人の命を直接とることを許されてない種族だ。
捕まったらどうなるかが楽しみだな。」
「死んでもいろんな法律に縛られるんだね、結局。」
「そうだなー。
結局、俺たちは何かに縛られてないとダメってことだろ?」
そうして、お互いに少し笑った。
この分なら、悪魔とは早くなじめそうだ。
家族が消えた痛みは治らないけど………。