ありますや 2

□模様替え
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わたしは悩んでいる。

今、お店にいるのは風来さん。
龍希さんは仕事にいっている。

それから、シッピー、コトミ君、スイちゃん、ガイ君が来てくれている。

外は寒いというので、みんな思い思いに過ごしている。

最近、人がよく集まるようになった。

でも、お店の中にある椅子はそんなに多いわけじゃない。

「おーい、何考え事してるのー?」

風来さんが目の前で手をふった。

「勉強も進んでないよー」

「それは風来さんがしょっちゅうしゃべりかけてくるからじゃないですか!」

「だって…せっかく……ねぇ?」

「?」

「まあいいや。で?俺の話も聞かないで何考えてたの?」

「わ、ごめんなさい!何話してましたっけ!?」

「ひどい…」

風来さんが落ち込んでしまった!

「ほんと、すみません!」

カウンターにうつぶせたまま顔を上げない。

「風来さん、すみませんってば…」

顔をあげない。

スイちゃんたちが何事かと近づいてきた。

「あれー?風来さんどうしたんですか?」

「うーん、ちょっとね、落ち込ませちゃって…」

「落ち込んだ時は頭をなでてもらうのが一番ですよ。ガイも…」

「わわっ。スイ!それ以上はっ」

ガイ君が顔を真っ赤っかにしてさえぎった。
もともとの色がさらに赤くなっている。

まあ、アドバイスくれたし、一応…

「風来さーん。ちゃんと話聞きますから、起きてくださーい。」

なんて言いながら髪の毛に触れる。

…あ、意外と柔らかい。
人の髪の毛触る機会がないので、ちょっと楽しい。

「くはっ。もう限界!」
「わっ」

風来さんはいきなり起き上がったかと思うと、椅子から降りてその足元にうずくまってしまった。

「風来さんっ!?」

「今こっち見ないで!動悸が!」

「〇心出します?」

「そういうのじゃなくて…」

「相変わらず面白いわねー」

シッピーがのんびり言う。

「いいなー。僕も頭なでてっ」

「いやよ。何でよ。」

コトミ君は負けじと絡んでいる。

風来さんはなんとか回復したらしく、またカウンターに頬杖をついた。

若干、顔が赤い?

「熱、あるのかな…?」

「麻美!本当にこれ以上触らなくていいから!照れるから!」

「えっ、あ…」

ようやく、理由に思い当たり、わたしも赤面。

外野はずっとにやにやしている。

うーわー
わたしの鈍感ー

「ま、まあ、とりあえず、話の続きをしよう。」

「そうですね。何の話でしたっけ。」

「あれだよ。えーっと、この店も色々置いてあってごちゃごちゃしてるけど、配置とかなんとかしたらもう少し広くなるんじゃないかって話。」

そうだった。

スイちゃんたちが遊びによく来るようになったから、スペースをどうにかしてみようかな、と。

そうすれば、他にも人が来て、また昔の『ありますや』みたいになるかもしれない…

「…やりましょうか、模様替え。」

ぽつりと言ったら、風来さんが食いついてきた。

「おっ。やる気になった!?」

「まあ、入った頃に少し片付けましたし、最近は大きな『仕入れ』もないのであまり動かさなくてすみそうですし。」

『ありますや』には行き場をなくしたモノが、たまにふっと現れる。

でも、本当に最近はタンスとか食器棚とかバカでかいものはこないので、『移動』させるのは苦ではないだろう。

「じゃあ、早速レイアウトを決めよう!」
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