ありますや
□路
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目が覚めると、私は見知らぬ空間にいた。
こういうパターン何度目よ。
トラウマになりそう。
「やあ、ようやくお気づきかい?」
この声……!?
パッと起き上がると、中年の、背がすらりとしいて、眼鏡をかけ、白衣を着た男性がいた。
「初めまして。僕は源吉。よろしくね。」
「あなた……男の子に『ありますや』のことを教えてたでしょ。そして、私にも話しかけてきた……」
「あっ。覚えててくれたんだぁ。」
忘れるわけがない。
あんなにインパクトがあったことなんだから。
「ここはどこ?風来さんと龍希さんは?何で私を連れてきたの?」
私はさっきまで寝ていたソファーから立ち上がった。
「まぁまぁ、落ち着いて。これからちゃんと説明するから。」
源吉さんはポットから飲み物を注いだ。
「飲む?」
「……いりません。」
よく冷静になって周りを見回してみると、壁は一面真っ黒で、家具は二つのソファーとテーブルとタンスだけで、それだけが真っ白だ。
少し離れた床には大きな円が描かれていたけど、魔法に疎いので何のためのものなのかはわからなかった。
なんだか……モノクロの世界にいるみたい。
唯一、私が寝巻きにしているシャツと短パンだけがカラーだ。
源吉さんも白衣に黒いTシャツにズボンだし。
辺りを観察していたら心が落ち着いてきたので、源吉さんの向かいに腰を下ろした。
「さてとぉ……じゃあ、順番に説明していこうかぁ。
まず一つ目。ここは、君がいた世界とは違う世界であり、僕の自宅兼研究室みたいな所の一部屋。
二つ目。あの二人にはまた別の仕事を与えてあるので、今はここにいない。
三つ目。君の力が必要なんだ。」
二つ目までは理解できた。でも……
「私の力を何に使うつもりなんですか?」
「もちろん、龍希くんと風来くんの夢を叶えるために使うんだよ。」